オコエ瑠偉、田中正義は新天地で躍動、藤原恭大はパ・リーグ首位打者 期待を背負って入団したドラ1たちの現在地
ドラフト1位の選手が成功すれば、誰もが幸せになる。
そんな絵に描いたような幸福が訪れたのは、近年のヤクルトだ。2010年ドラフト1位の山田哲人、2017年ドラフト1位の村上宗隆という大ヒットが生まれ、2021年からのリーグ連覇につながった。
野手陣に偉大なスターがいるからこそ、球団編成は弱点だった投手補強や将来を見越した人材発掘に振りきれる。好成績を挙げた選手は高額なサラリーを受けとり、魅力的な野球が見られるファンも喜ぶ。
だが、すべてのドラフト1位が計算どおりに働けるとは限らない。苦難を乗り越えようと奮闘している、ドラフト1位選手の現在地を見てみよう。
昨年開催された現役ドラフトで楽天から巨人に移籍したオコエ瑠偉この記事に関連する写真を見る
【オコエ瑠偉はレギュラー奪取なるか】
まず、今季ブレイクの兆しを見せているのはオコエ瑠偉(巨人)だ。
2015年夏の甲子園で見せたオコエのパフォーマンスは衝撃的だった。関東一高の1番・センターとして、初戦の第1打席に一塁強襲ヒット。オコエは迷わず二塁を陥れ、恐るべき快足をアピールした。他にも左中間の大飛球をダイナミックに捕球した守備、劇的な決勝ホームランを叩きこんだ打撃と走攻守に躍動。同年秋のドラフト会議では、楽天からドラフト1位指名を受けた。
だが、楽天では苦難の連続だった。一定のチャンスは与えられても、レギュラー定着には至らない。一見派手に見える言動も誤解を招くきっかけになったのだろうか。オコエの野球に取り組む姿勢について、楽天の首脳陣から厳しい声が聞こえるようになっていった。昨季までの入団7年間の通算成績は、236試合に出場して打率.219、9本塁打、20盗塁と寂しいものだった。
昨オフに「現役ドラフト」が初めて実施されると、巨人から指名されて移籍。原辰徳監督がオコエの潜在能力を高く評価し、オコエもオープン戦から期待に応えて開幕スタメンを勝ちとった。4月20日現在(以下同)、13試合に出場して打率.306、2本塁打と活躍。レギュラー奪取に手が届く位置にいる。
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プロフィール
菊地高弘 (きくち・たかひろ)
1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。