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オコエ瑠偉、田中正義は新天地で躍動、藤原恭大はパ・リーグ首位打者 期待を背負って入団したドラ1たちの現在地 (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Koike Yoshihiro

 そんななか、雌伏が続くのが中村奨成(広島)である。

 広陵高では高校3年夏の甲子園で、前人未到の大会6本塁打という大記録を樹立。中日との重複1位指名の末、地元・広島が当たりくじを引き当てた。

 だが、プロでは高い壁にはね返されるシーズンが続いている。2021年には39試合、2022年には27試合に出場したものの、一軍定着には至っていない。本職の捕手以外にも三塁や外野の守備にも挑戦したが、上昇機運に乗れなかった。

 今季は春先から右肩痛で出遅れ、最近になってようやくファームで先発出場できるようになったばかり。残された時間は長くはないが、中村らしいアグレッシブで瑞々しいプレーが見られれば必然的に一軍戦力になれるはずだ。

 2018年のドラフト会議で、3人で計11球団から指名を集めた大器たちも、一進一退の日々が続いている。4球団が1位指名した小園海斗(広島)は2年連続規定打席到達から一転、今季は打撃不振でスタメン落ちする試合も目立っている。3球団が1位指名した根尾昂(中日)は昨季途中から投手に転向し、今季はここまでファームで投手としての基礎固めに勤しんでいる。

 そんななか、今まさに飛躍しつつあるのが、根尾と同じく3球団から1位指名を受けた藤原恭大(ロッテ)である。

 大阪桐蔭では同期の根尾とともに甲子園春夏連覇を経験。中堅から低く、伸びてくるスローイングと塁間が狭く見えるベースランニング、細身をしならせたフルスイングと外野手としてのスケール感は抜群だった。

 ロッテ入団後は高卒1年目にして開幕スタメンを飾るなど、順調なスタートを切ったかに見えた。ところが、打撃面で結果が残せず停滞期が続いた。それでも、高卒選手を肉体的にも技術的にも進化させる球団をあげての育成プログラムに沿って徐々に力をつけていく。

 プロ5年目の今季は開幕から快調に滑り出し、ここまで16試合で打率.317、1本塁打、7打点の好成績を残し、現在、パ・リーグ首位打者に躍り出ている。この藤原に加えて前出の安田が上位打順に定着できれば、ロッテの新時代が幕を開けるはずだ。

 想像を絶するプレッシャーを背負い、自分の運命を切り拓こうと奮闘するドラフト1位の男たち。ファンはサナギから蝶へと羽化する瞬間を夢見て、今日もホープたちに熱い声援を送り続ける。

著者プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

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