WBC準決勝で大谷翔平がチームを引っ張っていると確信した象徴的な場面 岩瀬仁紀は栗山英樹監督の采配 吉田正尚の技術も大絶賛 (2ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Getty Images

 その後の吉田選手が四球でつなぎ、最後は村上選手が決めます。9回までの4打席ではヒットが1本も出ず、おそらく状況として一番きつい場面で回ってきました。でも、村上選手はこの大会を通じて苦しんできたからこそ、開き直れたと思います。初球から振っていけたことで、3球目をとらえることができたように感じました。

【逆転を呼び込んだ栗山監督の采配】

 ピッチャー陣について言えば、先発の佐々木投手はボールを操れていましたし、ピッチング自体はよかったです。4回の3失点は不運な形でヒットが2本続いたところに、甘くなったフォークボールを打たれて3ランとなりました。準決勝からは本当に一発で試合の行方が変わってしまうので、気をつけなければいけない場面ではありましたね。

 栗山英樹監督は5回から2番手で山本投手を送りましたが、トーナメントでは負けたら終わりなので、いいピッチャーから先に使うという姿勢が最後に逆転を呼んだという展開になりました。山本投手は同点に追いついてもらった直後の8回に勝ち越しを許しましたが、持ち味は出していたと思います。

 ただ、佐々木投手にも言えることですが、すべての球をマックスでいっていたので、一回り目はよくても二回り目から少しバテが来ました。これまで対戦してきたチームと比べると、メジャー各球団の主力どころが並んでいるメキシコ打線は実力的に2、3段上のように感じました。だから追い込んでも粘られるし、甘いコースはとらえられる。

 日本にとっては終盤までリードを許す厳しい展開でしたが、そこから最後に逆転したのは本当にすばらしい勝ち方だったと思います。

 ただし決勝で対戦するアメリカは、実力的にはさらに上のバッターが並び、しかも振れている選手が多いです。日本の投手陣はいかに怖がらずに、自分のピッチングができるかどうかがポイントになるでしょう。

 準決勝のベンチの様子を見ていると、日本の先発は今永昇太投手だと予想されます(試合後、栗山監督は今永の先発を明言)。そんなに長いイニングを期待するというより、ピッチャーの枚数をある程度使いながら継投で戦っていく展開になるはずです。

 今大会を通じて日本の投手陣は高い力を見せてくれていますが、なかでも今永投手は一番状態がいいと思います。序盤をしっかり抑えて、自分たちのペースに持ち込んでほしいですね。

プロフィール

  • 中島大輔

    中島大輔 (なかじま・だいすけ)

    2005年から英国で4年間、当時セルティックの中村俊輔を密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『山本由伸 常識を変える投球術』。『中南米野球はなぜ強いのか』で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。内海哲也『プライド 史上4人目、連続最多勝左腕のマウンド人生』では構成を担当。

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