「理想は上原浩治」 山本由伸、佐々木朗希ら侍ジャパン先発陣の投球フォームをフィジカルトレーナーが分析する

  • Text by Sportiva

 WBCで侍ジャパンの快進撃を牽引する投手陣。特に大谷翔平ら豪華な先発投手たちの顔ぶれは歴代最高とも言えるレベルだが、フィジカルトレーニングの専門家は彼らの投球フォームをどう見ているのか。

 アメリカでフィジカルトレーニングを習得し、独自のトレーニング理論でバスケットボールのプロチーム、プロのサッカー選手や野球選手、五輪選手たちを指導する吉原剛氏に、侍ジャパンの先発投手たちの投球フォームを分析してもらったほか、歴代の日本人投手のなかで最も理想的なフォームで投げていた投手などを聞いた。

WBC優勝のカギを握る山本由伸(左)と準決勝で先発する佐々木朗希 photo by Sankei VisualWBC優勝のカギを握る山本由伸(左)と準決勝で先発する佐々木朗希 photo by Sankei Visualこの記事に関連する写真を見る***

――フィジカルトレーナー視点から見た、理想的な投球フォームとはどんなフォームになりますか?

吉原 日本ではよく「下半身を使って投げる」という言葉が使われますね。打者側の足を大きく踏み出し、リリースポイントをなるべく打者の近くにすることが理想とされていたと思います。一方で外国人投手に対しては、「上半身だけで投げている」「手投げ」と指摘されることがある。スタンスが狭い投手が多いのでそう見えるのかもしれませんが、それは大きな誤解で、むしろスタンスが狭いほうが下半身を存分に使うことができるんです。

――その理由は?

吉原 ピッチングの重要な動きのひとつが「骨盤の動き」です。みなさんも、その場で投球動作をしてみるとわかると思うのですが、打者側の足を大きく前に出した場合と、小さく出した場合を比べると、小さく足を出した場合のほうが骨盤を回しやすいはずです。メジャーリーグの投手は、ボールをリリースしたあとに軸足が勢いよく前に出てくることも多いですが、それは骨盤の回旋力を十分に使えているという証拠なんです。

――吉原さんから見て、最も理想的なフォームで投げていた日本人投手は?

吉原 私が見たことがある投手のなかでは、日米で活躍した上原浩治さんが一番ですね。渡米1年目の2009年は先発でしたが、シーズン途中に左足の太ももと右ヒジのケガの影響で長期離脱。翌年の6月後半に本格復帰すると、リリーフとして防御率1.80、6ホールド、13セーブと好投しました。翌シーズン以降も活躍し、ボストン・レッドソックス時代にチームを世界一に導いたことも記憶に新しいです。

 上原さんはケガからの復帰以降、投球フォームが大きく変わりました。投球時のスタンスの幅が30cmくらい短くなったように思います。踏み出す足の幅が狭くなったことで骨盤が強く回旋するようになり、瞬発力が上がって体全体が前に突っ込んでいくようになった。左足が地面に着いたと同じくらいに軸足の右足が離れるような感じでしたね。

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