「理想は上原浩治」 山本由伸、佐々木朗希ら侍ジャパン先発陣の投球フォームをフィジカルトレーナーが分析する (2ページ目)
――なぜそのようなフォームに変化したと考えられますか?
吉原 メジャーの球場のマウンドが、日本よりも硬いことが理由のひとつだと思います。マウンドが硬いほど、足を大きく、強く踏み込むことでの下半身への負担は大きくなりますから。
上原さんは投球時、上げた左足の膝をセンター方向に入れて骨盤をひねり、左のお尻から打者側に体を移動させていきます。そこから骨盤を回旋させ、左足の落下エネルギーを加えて投げる。踏み込む足を下ろすスピードは、他のMLBの投手と比べても異常に速かったですね。
――その投球フォームにすることで考えられるデメリットは?
吉原 巨人時代の上原さんは、軸足の右足でプレートを押しなから、重心を前方に移動させていました。踏みこむ足の幅も広かったので、リリースポイントはその時のほうが打者に近かったと思います。
ただ、フォーム変更後は深く踏み込まない分、リリースの位置が高くなり、投げ下ろす形になるため速球の威力が高まったんじゃないかと。数字上でも、真っ直ぐの球速は140km台だったものの、ボールの回転数はメジャーの平均(約2200回転)を上回る約2400回転。それが「スピードガンの数値よりも速く感じる」と言われる所以でしょう。それによって、決め球のスプリットも生き、多くの三振を奪えたのではないでしょうか。
自ら動きながら投手のフォームを説明した吉原氏この記事に関連する写真を見る――では、WBC侍ジャパンメンバーの先発投手についても伺えたらと思います。まず、打者としても活躍する大谷翔平選手の投球フォームの印象は?
吉原 上原さんのように骨盤の回旋力がすさまじいですね。もともとの身体能力が高いですが、あれだけ体格に恵まれていると、思ったように体を動かせないことも多いんです。その点、大谷選手は身体操作能力(頭でイメージしたことを、実際の動きに反映させる能力)も非常に優れています。どうすれば効果的に力を伝えられるかをしっかり理解しているからこそ、投手と打者を高いレベルで両立できているんでしょう。ただ、今のレベルに達するまでには、相当な努力が必要だったでしょうね。
――ダルビッシュ有投手についてはいかがですか?
吉原 ダルビッシュ投手も渡米後に、投球時のスタンスが10~15cmほど短くなり、そこから投球がよくなっていった印象があります。骨盤の回旋力が大きくなった一方で、テイクバックは小さくなって肘や肩へのストレスが減った。また、リリースポイントを微妙に変えても、しっかりボールに力を伝えられているのが素晴らしいです。
ダルビッシュ投手の飽くなき探求心はファンの方がよく知っていると思いますが、ケガのリスクも考えたトレーニングの見直しと変化、新しい球種の開発など技術面の追求なども若い頃から行なっていましたね。それを継続してきたことが、36歳となった今でもチームのエースとして活躍できている理由なのでしょう。
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