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ダルビッシュ有とキム・グァンヒョン...14年前の歓喜と屈辱を経ての再戦 「こういう機会は最後かもしれない」の思いを胸に投げた (2ページ目)

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • photo by Sankei Visual

 キム・グァンヒョンは韓国リーグの2010年に17勝で最多勝に輝くが、左肩を痛めてしまう。その後、2年間は騙し騙しの登板が続いていたが、一向に回復せず、治療のため来日。横浜の専門医ほか各地を回るなど、孤独な時間を過ごしたこともあった。

 その甲斐あって、2013年には10勝を挙げ復活。それからも2ケタ勝利を続け、2019年には17勝をマークして、翌年、セントルイス・カージナルスに入団してメジャー移籍の夢を叶えた。

 だが2020年はおもに中継ぎとして3勝、21年には7勝を挙げるもオフにFAとなり帰国を決意。古巣のSKワイバーンズ(現・SSGランダース)に復帰した。

 このふたりにはほかにも重なる部分がある。力でねじ伏せるピッチングから、変化球を丁寧に投げ分けるスタイルへの転身だ。

 ダルビッシュについて印象的な光景がある。今年2月、侍ジャパンの強化合宿でのブルペン。自身の機器を持ち込み、ピッチング時にボールの回転数や変化球の曲がり具合を1球1球確認していたことだ。感覚と数値をいかに一致させることができるか。イメージどおりの回転、曲がり幅を求めて投げていた。

 その根を詰めたピッチングは、彼がいかにしてメジャーの世界で生き抜いてきたか、わずかではあるがその一端を垣間見た気がした。

【不完全燃焼の日韓戦】

 WBC韓国戦の2回、ダルビッシュは4番のパク・ビョンホを134キロのスライダーで空振り三振、つづくキム・ヒョンスは一塁ゴロ、パク・コンウもライトフライとテンポよく終えた。球数も少なく、スライダーのキレもいい。不安はないように思えたが......。

 ところが3回、先頭のカン・ベクホに二塁打を許すと、8番のヤン・ウィジには135キロのスライダーをレフトスタンドに運ばれた。その後、味方の失策からさらに1点を許し、この回3失点。ここまで球数は48球。1次ラウンドの球数制限である65球までまだ余裕はあったが、栗山英樹監督は4回のマウンドにダルビッシュを送ることはなかった。

「今年初めての試合だったんですけど、球速もそこそこ出ていましたし、最初の試合にしてはよかった。ただ、3回に点をとられたところは、スライダーが甘く入ったところを打たれた」

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