オリックス宇田川優希は育成から侍ジャパンへの大出世。覚醒請負人・中垣征一郎が明かす「衝撃の157キロと弾丸フォーク誕生秘話」

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Sankei Visual

 宇田川優希の名前が全国区になったのは、昨年の日本シリーズ第4戦だ。

 オリックスの先発、山岡泰輔が招いた5回ワンアウト3塁のピンチで登板し、三振が欲しい場面できっちり三振を奪った宇田川は、6回もマックス159キロのストレートとバットに当てるのが至難の業に見える鋭いフォークで三振を奪う。

 お立ち台では質問に対して「ありました」「うれしいです」「なりました」と3つの短文だけで答え、初々しさを感じさせた。日本一に輝いたオリックスが流れを引き寄せたのは、間違いなく第4戦で回跨ぎをした宇田川のあまりに力強いピッチングだった。

 2022年のシーズンが始まった時には育成選手だった宇田川は7月末に支配下登録され、8月以降、ホークスを差したバファローズに欠かすことのできない中継ぎの切り札となる。そして今、WBCを戦う日本代表に選ばれるところにまで一気に駆け上がった。宇田川にいったい何が起こったのか──その進化に深く関わっていたオリックスの巡回ヘッドコーチ・中垣征一郎がそのプロセスを詳(つまび)らかに語る。

第5回WBCの日本代表に選出されたオリックス・宇田川優希第5回WBCの日本代表に選出されたオリックス・宇田川優希この記事に関連する写真を見る

【きっかけは入来コーチのひと言】

── まず中垣さんが宇田川投手に目をつけたきっかけはどこにあったんですか。

「昨年の一軍は夏場以降、リリーフ陣の頭数が足りなくなるであろうことは想像できていました。そうやって考えたとき、リリーフとして戦力になる可能性が非常に高いと思える候補が、宇田川を含めて3人いたんです。彼らには先発の適性もありましたが、その時期から2軍の先発として徐々にイニングを伸ばしていこうと考えたら、夏場以降の一軍に間に合わせるためには時間が足りない。でも短いイニングだったら、一軍で勝負どころに投げられると思いました」

── 3人というのは?

「山﨑颯一郎と宇田川、セサル・バルガスの3人です」

── そして実際、シーズン後半から日本シリーズにかけて、山﨑颯一郎投手と宇田川投手はリリーフの切り札として活躍しました。

「颯一郎と宇田川に関しては、7月から8月のどこかのタイミングでは一軍で仕事ができるはずだと、そう思っていました」

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