最強助っ人・ラミレスが欠場を直訴したほど「対戦がイヤだった投手5人」。9連続三振を喫したエース、イライラしたスローカーブの使い手も (3ページ目)

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Sankei Visual

【一度、ダグアウトを通過してから曲がってくるカーブ】

――それでは、最後の5人目を挙げてください。

ラミレス 5人目は山本昌さん(元中日)ですね。彼の場合はバックドアの緩いカーブ。リリースした瞬間、一度ファースト側ベンチのほうに曲がって、"ダグアウトの中を通過してから"右バッターのインコースに食い込んでくる。大げさかもしれませんが、本当にそんなイメージなんですよ。ストレートはそんなに速くないので、「今日は打てそうだ」と思って試合に臨むのに、試合後には打てなくてイライラしていることが多かったです(笑)。

――山本昌投手のすごさはどこにあるのでしょう?

ラミレス 今言った緩いカーブと、ツーシームが絶妙でした。バットに当たったとしても、セカンドゴロかライトフライ。打てそうで打てないから余計にフラストレーションが溜まるんです。彼はきっと、速いボールを投げようと思えば投げられたと思います。でも、長くプロ野球の世界で活躍するために、あるいは長いペナントレースを万全のコンディションで乗り切るために、あえて全力の速いボールを投げず、緩急を織り交ぜながら変化球のコンビネーションで抑えていくことを選んだのだと思います。

――日本球界だけでも通算2017安打を放ち、名球会入りしているラミレスさんにも、これだけの苦手投手がいたんですね。

ラミレス 来日してから数年間はいろいろな投手に苦しめられましたが、ヤクルト時代の若松監督、八重樫コーチからいろいろアドバイスをもらいながら、自分でも一生懸命練習しました。あとは自己投資というのか、カメラやDVDプレイヤーを自費で揃えて、相手投手の研究を徹底的に行ないました。そうしたことが少しずつ結果になっていきましたが......ここで挙げた5人の投手たちは、やっぱりイヤでしたね(笑)。

(WBC2023:ラミレスが選ぶWBC侍ジャパン。「1番センターはヌートバー」、先発三本柱はダルビッシュ、大谷翔平と「今永昇太に任せたい」>>)

【プロフィール】
アレックス・ラミレス

1974年10月3日生まれ、ベネズエラ出身。1998年にインディアンスでメジャーデビューし、パイレーツを経て2001年にヤクルトに入団。その後、巨人、DeNAでプレーし、2014年にはBCリーグ・群馬ダイヤモンドペガサスに入団した。同年10月に現役を引退。日本での14年で首位打者、本塁打王、打点王、最多安打など多くのタイトルを獲得した。2016年シーズンからDeNAの監督を務め、2017年シーズンは日本シリーズにも進出。2020年シーズンをもって監督を退任したあとは、バラエティ番組やYouTubeなど活躍の場を広げている。

アレックス・ラミレス公式YouTubeチャンネル
『ラミちゃんねる』の詳細はこちら>>

【著者プロフィール】

長谷川晶一 はせがわ・しょういち 

1970年5月13日生まれ。早稲田大学商学部卒。出版社勤務を経て、2003年からノンフィクションライターとして、主に野球をテーマとして活動。2005年よりプロ野球12球団すべてのファンクラブに入会し続ける、世界でただひとりの「12球団ファンクラブ評論家(R)」。主な著書として、1992年、翌1993年の日本シリーズの死闘を描いた『詰むや、詰まざるや 森・西武vs野村・ヤクルトの2年間』(インプレス)、『プロ野球語辞典シリーズ』(誠文堂新光社)、『プロ野球ヒストリー大事典』(朝日新聞出版)。また、生前の野村克也氏の最晩年の肉声を記録した『弱い男』(星海社新書)の構成、『野村克也全語録』(プレジデント社)の解説も担当する。

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