【異種アスリート対談】斎藤佑樹×車いすバスケ香西宏昭が語り合う「闘うメンタルのつくり方」 (3ページ目)
この記事に関連する写真を見る香西 一番はやっぱり東京パラリンピックですかね。割り切りみたいなところは、僕はとくにオフェンスで感じていたんですよ。いくら練習しても、そのとおりにいくとは限らないから。
斎藤 運の部分もある?
香西 そうです。ゴールに弾かれることもあるし。だからシュートを打った瞬間、結果はどうであれ、すぐ次のディフェンスにいくと心がけていたんですよ。日本代表はオールコートディフェンスが武器のチームでしたから、まずは攻守の切り替えが大切なんです。そこに集中したら、東京パラリンピックでは自分のミスも周りのミスも審判の笛もどうでもよかった。「よし、次いこう!」って気持ちになれたんですよ。
斎藤 結果に左右されないで、自分のやるべきことをやる......。
香西 そうです。自分もそうだったし、チームとしてもみんな同じ方向を向いていたんですよ。
斎藤 香西選手が苦労してたどり着いた境地に、チームのみんなは平然とできていたということなんですか?
香西 チームでもメンタルトレーニングに取り組んでいたので、その成果でもありますけど、みんなすごいなと思いながらやってました、僕は(笑)。
斎藤 香西選手をはじめ中心選手ができていたから、周囲が影響を受けたところもあるでしょうね。
香西 東京パラリンピックでは日本代表が初めて大きな大会で決勝まで勝ち進みました。僕自身もそこに身を置いて初めて、これが波に乗るということなのかって実感しました。ずっと勝てなかった日本代表なのに、みんな勝つのが当たり前って感じになっていましたから。
斎藤 それ面白いですね。
香西 斎藤さんも甲子園はそうだったんじゃないですか? 淡々と投げているように見えましたよ。
斎藤 淡々とできるって、ある程度の境地にいないと難しいじゃないですか。僕らの場合は準々決勝で苦しい試合を勝ちきって、それをきっかけにポーンといった感じでしたね。
香西 なるほど。
斎藤 淡々とできる時って、自分のパフォーマンスの状態がいい時だと思うんです。メンタルだけではどうにもできない場合もあって、僕は、メンタルには達観していたつもりだったけど、ケガもあって技術と体力のパフォーマンスがメンタルに追いつけなかった。プロではそこが苦しかったですね。
香西 僕もケガはいろいろとやってきました。期待されたところでパフォーマンスを出しきれない苦しみはすごくわかります。
構成・文●市川光治(光スタジオ)
撮影・文●名古桂士、伊藤真吾(X-1)
斎藤佑樹(さいとう・ゆうき)/1988年6月6日生まれ。群馬県出身。早稲田実業高のエースとして、2006年夏の甲子園において「ハンカチ王子」フィーバーを巻き起こし、全国制覇。早稲田大進学後も東京六大学リーグで活躍し、2010年にドラフト1位指名で北海道日本ハムファイターズに入団。1年目から6勝を上げ、2年目は開幕投手も務めた。ケガに悩まされて2021年シーズンで引退。株式会社斎藤佑樹を立ち上げて、野球の未来づくりにつながるさまざまな活動を開始した。
香西宏昭(こうざい・ひろあき)/1988年7月14日生まれ。千葉県出身。NO EXCUSE所属。小6で車いすバスケを始める。高校生の時に千葉ホークスの中心選手として日本選手権で優勝し、卒業後に渡米。イリノイ大学では2年連続全米大学リーグシーズンMVPを受賞。卒業後はドイツでプロ選手のキャリアを重ね、昨シーズンはドイツリーグ優勝。パラリンピックは4大会連続出場。東京大会は3ポイント成功数、成功率ともに1位で銀メダル獲得に貢献。昨年から拠点を日本に移して活動開始。
天皇杯第48回 日本車いすバスケットボール選手権大会
2019年5月の前回大会以来、3年半ぶりの 開催となる天皇杯。コロナによる大会の空 白期間に、2021年の東京パラ銀メダル獲得、 2022年のU23世界選手権優勝と日本の車いすバスケは大きく進化した。
一方、国内クラ ブチームシーンでも若手の成長、引退や移籍で戦力が大きく変動することになった。
大会12連覇に挑む宮城MAXと予選を勝ち上 がった7チームはどこも自分たちの強みを 持った実力派揃い。天皇賜杯と日本王座をめぐる争いは、かつてないほどに熾烈を極めることになりそうだ。
日本の車いすバスケに新時代の扉を開く 第48回大会。久々の有観客開催となるので、 その熱を会場で体感してほしい!
【日程】2023年1月20日(金)・21日(土)
【会場】東京体育館
【テレビ放送】BS日テレ 15:30~17:30
【チケット】20日は終日無料 21日は有料観戦
チケットはQRコードのローソンチケットで発売中!
◆【動画】斎藤佑樹×車いすバスケ・香西宏昭 異種アスリート対談
動画撮影●大井沙紀
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