栗山英樹監督が語るWBCでの選手起用論。「先発投手は4人で十分。5人目の先発は力があるとわかっていても選ばない可能性もある」 (6ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Igarashi Kazuhiro

── 戦力という観点から見ても、彼は右投げ左打ちの外野手で強肩、選球眼もよく、一発もあります。カージナルスではムードメーカーだし、ヌートバーの加入はジャパンにとってはいろんな方向から足りないピースを埋められる存在です。

栗山 日本の選手を育てるために機会を与えることも考えたうえで、本気で勝つつもりならそういう選手を3人入れてもいいとさえ思っています。

── 3人?

栗山 野球はグローバル化していかなければならないし、このWBCで日本と縁のある選手を巻き込むことで野球を日本から世界へ広げていくことも僕の使命なのかなと思っていています。

── 縁が大切だということで考えればイエリッチ選手はイチロー選手と、ヒガシオカ選手は田中将大選手と一緒にプレーしたこともあります。

栗山 いずれはアメリカの野球が普通にならないと日本の野球のレベルは上がりません。アメリカの野球が特別なものになってはいけない。僕らは追いつけ追い越せでやってきて、最近は追い越せないとどこかで思ってしまっている。それを野茂(英雄)やイチロー、松井(秀喜)や(松坂)大輔......ほかにもたくさんの日本人選手が覆してくれて、今はダル、翔平、誠也が頑張ってくれています。マエケン(前田健太)も(菊池)雄星も、筒香(嘉智)も澤村(拓一)も、有原(航平)だって今、アメリカで戦っている。

 そういう選手たちの姿を見てもらうことで、子どもたちに「僕もこういうふうになりたい」という夢を持ってもらいたいんです。それが彼らの生きる力にならなきゃいけない......WBCはそういう戦いだと思っています。10年後、「あのWBCを見て僕もそうなりたいと思ったんです」という子どもが出てきてくれるよう、そういう姿を見せてくれって選手にはお願いしたい。それこそが日本野球の"魂"だと思いますから──。

おわり

栗山英樹(くりやま・ひでき)/1961年、東京都生まれ。創価高から東京学芸大を経て、84年ドラフト外でヤクルトに入団。89年には自己最多の125試合に出場し、ゴールデングラブ賞を獲得。90年の現役引退後は野球解説者、スポーツキャスターとして活躍。2012年から日本ハムの監督に就任し、1年目にリーグ制覇。16年には日本一を達成した。10年間日本ハムの監督を務めたあと、22年から侍ジャパンの監督に就任した。

【著者プロフィール】石田雄太(いしだ・ゆうた)

1964年生まれ、愛知県出身。青山学院大卒業後、NHKに入局し、「サンデースポーツ」などのディレクターを努める。1992年にNHKを退職し独立。『Nunber』『web Sportiva』を中心とした執筆活動とともに、スポーツ番組の構成・演出も行なっている。『桑田真澄 ピッチャーズバイブル』(集英社)『イチローイズム』(集英社)『大谷翔平 野球翔年Ⅰ日本編 2013-2018』(文藝春秋)など著者多数。

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