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楽天の歴史的大失速はなぜ起きたのか。OB磯部公一が指摘する課題「外国人野手で当たりを引かないと厳しい」 (3ページ目)

  • 栗田シメイ●取材・文・撮影 text by Kurita Shimei
  • photo by Sankei Visual

――ファームで注目している選手はいますか?

礒部:「黒川史陽選手なんかもレギュラー争いに加わってほしいですね。私の中では、ファームで通用している打者は上でもやれる、という持論があるんです。黒川選手はすでに下での実績はありますから、あとは守備位置との兼ね合いも加味して、どれだけ打つほうで結果を残せるかでしょう。打席を与えられたら結果を残しそうな雰囲気はあるので、秋季キャンプやオープン戦で結果を残して、どれだけチャンスをもらえるか。素材は間違いないので、期待したいですね」

――これまで打撃陣の名前が多く挙がりましたが、今年のドラフトでは6指名中5名が大卒、社会人投手という編成上の偏りもあった印象を受けました。

礒部:「今年の指名を見る限り、石井一久監督は長期的な視点でチームづくりを考えているんだろうな、という印象を持ちました。今のチーム事情でいえば、投手陣の主力が高齢化していますから、首脳陣としては瀧中瞭太選手や藤平尚真選手あたりにそろそろ一本立ちしてほしい。ただ、彼らが思うような結果がまだ残せていないので、編成上での考え方が変わってきているようにも見えます。

 本来であれば野手にも手を入れたいところなんでしょうが、まずはうまく投手陣を整備するほうが優先順位は高かった。いい投手は何人いてもいいですからね。指名に関しては周囲からは批判もあったかもしれませんが、大卒や社会人の即戦力として期待できる投手が多いのも、球団の根底にそんな考え方があるからでしょう」

――最後に来季の展望と、あらためて補強ポイントを教えてください。

礒部:「投手、野手ともに世代交代のタイミングが来ていることは間違いない。来季は優勝というよりも現実的にAクラスを目指す戦いになるでしょうが、その中で投打ともに活きのいい若手が2人ずつくらい出てきてほしいですね。そういった視点では、どれだけ若手にチャンスが与えられるか、にも注目したい。山本由伸選手のような絶対的なエースはいないですが、投手陣の駒は揃っています。急に劇的に打てるチームになることは考えにくいので、投手陣がどれだけ頑張れるかで、順位は変わってくる。

 補強については外国人の大砲をひとり補強することはマストで、そこに加えて、私は巨人にいた(ゼラス・)ウィーラー選手を獲得しても面白いかな、と考えています。彼の場合はシーズンを通して計算が立つ選手だし、それなりに守れる上にまだ衰えもないように感じます。何よりもイーグルスというチームに馴染んでしますし、東北という気候の中での調整もうまい。チームを明るくする選手ですし、彼のような存在がいてくれるとありがたいはず。楽天の伝統的に外国人が当たりの時は上にいきますが、そうでない年は苦しくなる。今季の結果を受けて、まずは新外国人の補強に注目しています」

(インタビュー2:「最後の近鉄戦士」坂口智隆の引退に喪失感。いてまえ打線「天才はいなかったけど、練習量がすごかった」>>)

【プロフィール】
礒部公一(いそべ・こういち)

1974年3月12日生まれ、広島県東広島市出身。三菱重工広島時代、1996年のドラフト会議で近鉄バファローズから3位指名を受け入団。2年目からレギュラーに定着して"いてまえ打線"の一角を担い、2001年には12年ぶりのリーグ優勝に貢献した。2003年から選手会長を努め、翌年の近鉄とオリックスの合併問題・球界再編問題の労使交渉に奔走。2005年に東北楽天ゴールデンイーグルスに創設メンバーとして加入し、初代選手会長に就任。2008年に引退するまで「ミスターイーグルス」としてチームを牽引した。引退後はコーチとして球団に残り2017年まで後進の育成に努めた。2018年からは解説者として活躍中。
現役時代の通算成績・・・1311試合出場、打率.281、1225安打、97本塁打、517打点

【ライタープロフィール】
栗田シメイ(くりた・しめい)

1987年生まれ。広告代理店勤務などを経てフリーランスに。スポーツや経済、事件、海外情勢などを幅広く取材する。『Number』『Sportiva』といった総合スポーツ誌、野球、サッカーなど専門誌のほか、各週刊誌、ビジネス誌を中心に寄稿。著書に『コロナ禍の生き抜く タクシー業界サバイバル』『甲子園を目指せ! 進学校野球部の飽くなき挑戦』など、構成本も多数。南米・欧州・アジア・中東など世界30カ国以上で取材を重ねている。

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