「足は速くない」「メンタルも弱い」のに4年連続盗塁王。なぜ片岡保幸はタイトルを獲得できたのか (2ページ目)

  • 長谷川晶一●文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Kai Keijiro

── 具体的にはどのような技術なんですか?

片岡 今はリプレー検証があるから難しいですけど、僕が現役時代に意識していたのは「審判の目をごまかすスライディング」でした。いかに「足が速くベースに入ったと思わせるか?」ということは強く意識していました。ポイントとなるのはスピードを落とさずにスライディングすることですね。

── スピードを落とさずにベースに到達するためには、なるべくベース付近でスライディングを始めるのがいいと聞いたことがあります。

片岡 そうですね。ベースから遠い位置でスライディングを始めると、どうしてもお尻で滑ったり、手がついてしまって摩擦部分が大きくなってスピードが落ちてしまいます。その摩擦を減らすために、なるべくベース付近で、膝裏で滑る。滑ってもすぐに立つ。そういうことが重要になってきます。

盗塁成功のメカニズム

── 片岡さんの盗塁のメカニズムについて伺います。リードはどのくらいとっていたのですか?

片岡 リードは大体、5歩半ですね。ほかの選手と比べてそこまで変わらないと思うけど、多少短いのかな? 僕がプレーをした西武ドーム(現・メットライフドーム)、東京ドームで言えば、リードをして左足が土と芝の境目、右足は完全に芝の上でした。左ピッチャーの場合は両足とも芝生に出ていました。

── 左ピッチャーの場合のほうがリードは大きくなるんですか?

片岡 リードは大きくなりますね。右ピッチャーの場合は回転して速い牽制がくるけど、左ピッチャーの場合はそれがないですから。左ピッチャーの場合、お互いに正対して向き合うことになるけど、僕はピッチャーの目は見ないでユニフォームの胸のロゴ、チーム名の刺繍を見るようにしていました。

── それは、どんな理由からですか?

片岡 一点に集中してしまうと、そこに気をとられて身体が前傾姿勢になってしまうんです。身体が前にいってしまうということは動きが止まるということだし、肩に力が入るということでもあります。肩に力が入ると、膝にも力が入って力んでしまう。そうなると、動き出しがコンマ何秒か遅れてしまいます。だから、僕は一点を凝視しないで胸のあたりをボンヤリと見るように意識していました。

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