ヤクルト連覇を支えた名脇役の成長秘話。山崎晃大朗の「献身力」と奥村展征の「声」はチームに勇気を与え、勝利へと導いた (3ページ目)

  • 島村誠也●文・写真 text & photo by Shimamura Seiya

 高津臣吾監督は奥村の「声」についてこんな話をしてくれた。

「チームがボロ負けしていても変わらないところがすごいですよね。飛んできたボールを普通に処理するのと一緒のような感覚で、当たり前のように声を出している。なかなかできることではないと思っています。試合に出ることは少ないですが、何かあれば『奥村でいこう』となる選手ですし、チームを盛り上げることも雰囲気を読むこともできるので、監督として本当にありがたい選手です」

シーズン96敗、16連敗、最下位...

 プロ入り後のふたりは、勝つことよりも負けることのほうが多かった。2017年にはシーズン96敗、2019年には16連敗を経験。2年連続最下位の屈辱も味わっている。

 選手としても、山崎はレギュラー定着にあと少しのところでたびたびチャンスを逃し、奥村は右ひざの手術をするなどケガに苦しんだ。山崎が言う。

「その頃はチームが勝てないという悔しさよりも、自分をアピールすることに執着していて、毎朝起きるのがつらかった時期もありました。去年も優勝はしたのですが、自分がまったく戦力になれなかったことが悔しくて......。今年は調子の良し悪しはありましけど、シーズン中盤から後半にかけてスタメンで出られる試合が多かったので、自分でも成長したのかなと。少しは優勝に貢献できたかなと感じているので、去年のようなモヤモヤした気持ちはありません」

 奥村はヤクルトが優勝した2015年に、相川亮二のFA移籍に伴う人的補償選手として巨人から移籍。しかしその年は、ケガの影響もあって歓喜の輪に入ることは叶わなかった。

「そのあとは96敗とか16連敗とか......。チームが苦しい時に一軍の経験をさせてもらったのですが、自分のなかで負けが込むのが当たり前という雰囲気になっていたのは、正直ありました。去年の優勝の時は、宮崎のフェニックスリーグに参加していて、西都の宿舎のテレビで見ていました。本当にうれしくて感動したのですが、自分があの場所にいたかったという悔しい気持ちもありました。今年、こうして一軍にいられるのは、去年の悔しいという気持ちがあったからだと思います。なによりも、優勝に向って『目の前の1試合を絶対にとるんだ』というチーム状況は、自分にとってすごくプラスになっています」

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