斎藤佑樹がグラブづくりの現場でマイスターから学んだ「野球界のためにやらなければいけないこと」 (4ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta

岸本 一番はオイルで磨くことですね。やはりオイルを塗るということは革にとってはすごくいいことですから......重たくなるとか、柔らかくなるから嫌と言う人もいますけど、泥や埃がついたまま使い続けるとグラブの革にはダメージがありますから、オイルで磨いてあげてほしいといつも願っています。

斎藤 革というのは繊細なんですね。

岸本 表面のタッチは手入れをしないとすぐに変わってしまいます。せっかくコシの強い、弾力性のある革を選りすぐっても、手入れ次第で台無しになってしまいますからね。革にはベニヤ板みたいに硬くて弾力性のない革もあるんです。そういう革でつくってもいいグラブはできません。

斎藤 みなさんの作業を見ていて、力作業が多いことにも驚かされましたが、グラブをつくっていると手のマメができやすいということはありますか。

岸本 最初の頃は靴擦れのような感じで皮がむけて、手のあちこちがおかしくなっていました。最近は薬指の下の部分......紐革を引っ張る時に力を入れるところなんですけど、そこにマメができるくらいですね。ただ、手はずいぶんきれいになりましたよ。最近は右手に手袋をはめてやったりしてますからね。

斎藤 ホントだ......職人さんの手とは思えないくらい、きれいですね。工場にはずいぶんたくさんの女性もいらっしゃいましたが、今、グラブ職人の数というのは減ってきているんですか。

岸本 ミズノで言えば、私がこの工場に入った時はすべてあわせて80人くらいはいましたね。今は50人ぐらいで人数的には減っていますけど、若い人も入ってきていますし、女性もたくさんいます。一個のグラブをつくる作業をひとりですべてこなせるようになった人は増えていますし、そういう意味では増えていると言えるんじゃないかな。

斎藤 野球人口が減っていると言われているなかで、グラブ職人として野球界に対してどんなアプローチをしていきたいと考えていらっしゃいますか。

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