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斎藤佑樹がグラブづくりの現場でマイスターから学んだ「野球界のためにやらなければいけないこと」 (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta

斎藤 野球界のためにできることはあるし、そういう風を吹かせたいですね。そもそも岸本さんはなぜグラブ職人になろうと思ったんですか。

岸本 私は出身が地元で、工場の隣が母校の中学校なんです。私が野球をしていた中学生の時にこの工場が建って、ここで将来、グラブをつくれたらいいなと思っていました。最初の頃はグラブも大量生産で、各工程の中のひとつの作業を担当するという感じだったんですが、やがてひとりですべての工程を任されてグラブをつくるようになってからはすごくやり甲斐が出てきました。

斎藤 グラブをつくって楽しいとか、喜びを感じる瞬間ってどういうときなんですか。

岸本 プロの選手のグラブをつくるようになってからは、公式戦でファインプレーをしてくれればすごくうれしいですよ。その逆で、エラーしたらグラブが悪かったのかと今でも落ち込みます。

斎藤 いやいや、決してグラブのせいじゃないと思います(笑)。常日頃、選手からのフィードバックについては、どんなことを感じていらっしゃるんですか。こういう言葉はうれしいとか、こんなことがあるとショックだとか......。

岸本 キャンプ前、シーズン中、グラブをつくってお渡ししたあとの反応はすごく気になります。ただ「すごくよかった」という反応が返ってくることは稀で、何も言われないからよかったんだろうな、というふうに受けとることがほとんどです(笑)。

斎藤 やっぱり岸本さんは、これは絶対にいいと言ってもらえるはずだ、と自信を持って選手にグラブを手渡すんですか。

岸本 まぁ、絶対ではないですけど、でも自分で選んだ革を使ってつくれば、それなりのものはできると思ってやってきましたし、ダメだと言われればショックはあります。何しろ天然皮革なので、微妙なバラツキは常にありますからね。

クラフトマンとしての使命

斎藤 逆に選手に対する岸本さんからの要望って、何かありますか。

岸本 選手への要望ですか。

斎藤 グラブをこんなふうに扱ってほしいとか、こういうこだわりを持ってほしいとか。

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