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斎藤佑樹がグラブづくりの現場でマイスターから学んだ「野球界のためにやらなければいけないこと」 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta

斎藤 そういう試みにはミズノとしてトライしてきましたよね。

岸本 そうですね。ただ、傷のついた革を使ったグラブが特別な商品としてではなく、通常、店に並んでいる商品として販売できたらいいと思うんです。そこは日本の品質基準が高いということもあって、なかなか難しいですね。もったいないですよ。

斎藤 たしかに......ルイ・ヴィトンとかサンローランとかはそういう試みをやっていると聞いたことがあります。ブランド力があれば、傷があっても売れる。むしろ、こういう時代なら傷があるからこそ買おうという人もいるかもしれない。ミズノも圧倒的にブランド力があるわけですから、できますよね。

岸本 できると思いますよ。牛以外の革というのも調べてみたいですね。その昔、ワニの革を使ってつくろうとしたこともあったらしいので......厚みや硬さがグラブに適していなかったんでしょう。昔からグラブは紐革も牛革なんです。これだけでも人工皮革にできたらずいぶん違うと思うんです。もちろん紐革も牛革じゃないと本体に馴染まないとかいうことはあるんですけど、使う側がどこまでなら受け容れられるかということですよね。

斎藤 結局、傷のある革でつくったグラブが品質として劣らないなら、プロの選手が『俺、傷は気にしないよ』と言って使えばいいということですか。

岸本 それはありがたいですね。少々の傷がある革でも、革の質がよければより高いクオリティのグラブはつくれます。むしろほんの小さな傷があることで、せっかくの質のいい革が使えないこともあります。

選手がエラーをしたら落ち込む

斎藤 道具の値段が高いというのは野球界が抱える課題のひとつです。

岸本 傷があってもグラブをつくる革として使えて、それが当たり前の商品として認知されるようになれば値段は下がるかもしれません。プロの選手が傷のことは気にしないと言って下されば......もちろん、ひとつだけをオーダーしたグラブに傷があるのはイヤだという人は多いと思います。ただ、店頭ではめてみたら自分の手にフィットした、革に小さな傷はあるけど、でも安いとなったら、傷は気にしないという人はいるかと思います。

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