山本由伸、千賀滉大に共通する思考。進化するピッチングの秘訣は「常識にとらわれない発想力」 (3ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Koike Yoshihiro

 現在フリーのコーチとして活動する荻野が子どもたちを教える際、とくに意識するのはプログラムの組み方だ。大人が口を挟まなくても、自分自身で上達していけるプログラムを用意している。

 プロアドバイザーを務める堺ビッグボーイズに紹介したのが、バレーボールやソフトボールなど大きなボールを投げるメニューだ。

「何も考えずに投げれば、必ず自分のバランスで投げます。本人は"いい投げ方をしよう"なんて思っていなくても、大きいボールを投げているうちに自然といい投げ方に変わってくる。基本的に"教えない"ことを重視しています」

 連載第4回で紹介したように、堺ビッグボーイズではキネティックフォーラムを主宰する矢田修トレーナーの監修を受けてブリッジや横走りなどのエクササイズを行なっている。いずれもスローイングに必要な要素が組み込まれたメニューだ。

 その次に大きいボールや、フレーチャという槍投げにヒントを得た器具を投げていく。スペイン語で「矢」を意味するフレーチャは山本由伸(オリックス)も取り入れているものだ。

 以上の効果について、荻野が説明する。

「ブリッジやフレーチャ、大きいボールを投げることは全部つながっています。胸郭が柔らかくなると、より投げられるようになりますからね。そうやって体全体で投げることを自然と覚え、さらにステップして投げることで体重移動を覚えていきます。

 日本では『(軸足で)しっかり立て』と言われますが、ドミニカ人投手たちを見ていると足をうまく使っています。足をうまく使い、その力をボールに伝えるのがうまい投げ方です。体重移動の方向に対してボールをうまく投げられるようになるプログラムを組めば、子どもたちは自然と効率的に動けるようになる。僕は全国で中学生を見ていますが、堺ビッグボーイズはダントツでうまく投げられています」

 前述した矢田トレーナーの下で沢村賞投手に飛躍したのが、オリックスの山本だ。当初、独特の投げ方には批判的な声も少なくなかったが、結果を残した今、そうした声は聞こえにくい。

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