ひと振りにかけた男たち。球史に残る名場面を演出した「代打の神様」列伝 (2ページ目)

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi
  • photo by Sankei Visual

 2本目は、2001年の北川博敏(近鉄)の代打アーチだ。近鉄がマジック1として迎えた本拠地・大阪ドーム(現・京セラドーム)の最終戦、2対5と3点ビハインドで迎えた9回裏無死満塁から、代打・北川がホームランを放ち劇的な優勝を飾った。

 2年連続最下位からのリーグ優勝は2001年の近鉄、2015年、2021年のヤクルトの3例しかないが、「代打逆転サヨナラ満塁優勝決定本塁打」はプロ野球史上唯一の記録である。20年以上経った今も語り継がれる、史上最高の劇的な優勝決定と言ってもいいだろう。

 最後は、2011年の巨人・長野久義(現・広島)だ。長野はシーズン最終戦のDeNA戦(東京ドーム)で1点ビハインドの9回裏無死満塁の場面で山口俊からNPB史上8人目となる「代打逆転サヨナラ満塁本塁打」を記録。

 これがセ・リーグ通算1000本目の満塁本塁打で、この試合で勝利投手となった内海哲也(現・西武)が吉見一起(中日)に並んで、初の最多勝のタイトルを獲得。さらに長野自身も首位打者を決定づけた。巨人の右打者の首位打者は、1971年の長嶋茂雄以来、じつに40年ぶりの快挙だった。

代打の世界記録保持者

 通算代打本塁打は高井保弘(阪急)が27本で、これは世界記録である。代打での"ひと振り"にかけるため、投手の特徴、傾向を書きとめた「高井メモ」は有名だった。

 ヤクルトも阪神と並び、代打での好成績が目立つ。生涯打率.319の記録を持つ若松勉は、1977年から79年にかけて「代打サヨナラ本塁打」を3発も放っている。

 真中満は2007年に代打シーズン31安打の日本記録を樹立。そして昨年、川端慎吾が真中の記録に迫る代打シーズン30安打をマーク。さらに川端は、日本シリーズ第6戦の延長12回に代打で登場し、日本一を決める決勝打を放った。

 変わったところでは、左足のかかとを上げて構える独特な「ガニ股打法」の種田仁(中日)が、2000年に「代打11打席連続出塁」という記録をつくっている。

 ひと振りにかける男たちがつくるドラマを、これからも楽しみにしたい。

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