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イチローから「どうします?」。WBC伝説のタイムリーの裏でスコアラーが答えたイム・チャンヨンの狙い球 (3ページ目)

  • 白鳥純一●文 text by Shiratori Junichi

――第2回のWBCは、イチロー選手が打撃不振に苦しむ姿も印象的でした。

「イチローくらい素晴らしい成績を残している選手に対しては、本来、私たちができることはないんですけどね。ただその大会は、普段のイチローだったらヒットにできているはずのボールに対しても消極的で、振らなくてもいいボールに手を出して凡退している印象がありました。おそらく、打撃の微妙なバランスが狂っていたのではないかと思います」

――イチロー選手は、どのように打撃不振を乗り越えようとしていましたか?

「とにかく、すさまじい練習をこなしていましたよ。全体練習を終えた後でも室内練習場からバットを振る音が聞こえてくるなど、毎日延々とフリーバッティングを続ける姿にも驚かされました。そういったこともあり、韓国との決勝戦の最後に、『野球の神様が、イチローに花を持たせてくれたのかな』と思います」

――2-2の同点で迎えた延長10回表2アウト2、3塁、イチロー選手が決勝打を放った相手は、ヤクルトでプレーしていた林昌勇(イム・チャンヨン)投手でしたね。

「あの場面、イチローが打席に向かう前に『どうします?』と聞いてきたので、私は『ここは、シンカーに狙いを絞ろう』と伝えました。林昌勇はプロ野球の試合で、左打者に対しては勝負球であるシンカーを多投していましたし、あの場面で投げてこないはずがありませんから。

 右のサイドスローだった林昌勇に対しては、右打者の場合はスライダーも視野に入れないといけないのですが、左打者だとある程度はそれを"捨てる"こともできる。それでも打者を抑えてきた素晴らしい投手ですが、イチローであれば対応できると考えました。一塁が空いている状況で勝負してもらえたのも幸いして、見事にシンカーを捉えましたね。それまでの努力も含め、劇的な瞬間を見ることができて感無量でした」

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