PL学園・伝説のコーチが明かす、立浪和義の高校時代とリーダーの資質「先を見る力は群を抜いていた」 (4ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Okazawa Katsuro

立浪 PLでは「徳を積む」という教えがあって、ゴミを拾うとか、人が嫌がってやらないことを率先してやるとか......そういうのがあるんです。朝は寒いし、落ち葉って掃いても掃いてもどこからか飛んでくるから終わらない。でも、なんとか続けてな。

片岡 ほんまに寒いからジャンパーを2枚ぐらい着込んでやったんですけど、やっているうちにどんどん無心になってくる。「ああ、こういう気持ちで打席に入らんとあかんのか」って、落ち葉を掃くなかで教えてもらった。

立浪 心もサラサラになるし、謙虚な気持ちも出てきて......思い出すなぁ。

 最初はふたりで始めたことだが、やがてほかのメンバーも続くようになり、チームに一体感が生まれた。

人には言えない12年の思い

 そして清水の話は、指導者論にまで広がった。

「僕はコーチ時代、親や選手からええコーチと思われたいなんていっさいなかった。そんなことが少しでもあったら、絶対に選手から信頼されんかったでしょうね。指導者の評価は他人が決めるんじゃなくて、『オレはこれをやるんや』とポリシーを持って指導して、それを選手がどう受け止めるか。高校でもプロでも、指導者は『これをやれば勝てるんだ』という信念を持って本気でぶつかっていく。人の目や評価を気にしてやっていたら、選手はついてきません」

 今年のキャンプ前、清水は立浪と電話で話すことがあった。名古屋のテレビ番組で立浪監督の特集が組まれ、中村と清水がVTR出演。映像を見ながら立浪がスタジオで語り、その後、本人からお礼の電話が入ったという。

 近況を聞いたのち、清水が「ずっと待ってるんやけど、オレのところにコーチのオファーはいつあるんや? 厳しさが必要なら、オレが必要やろ」と冗談めかして言うと、「すみません、忘れていました」と明るい声が返ってきたという。

「監督になって、声が元気になりましたね。中日ひと筋でプレーして、引退の時も『大きくなって帰ってきたい』と言ったけど、なかなか声がかからなかった。人には言えない、12年の思いがあったはず。その思いを持っての今ですから、そら燃えに燃えているでしょう」

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