投げすぎと投げなさすぎのボーダーラインは? ステージごとで変わる「野球ヒジ予防」の認識 (3ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

「みなさん、『まさかうちの子が......』と言われます」

 島村医師は長らく野球ヒジへの注意喚起、ケアの必要性を訴えてきたが、感覚的には1割にも届いていないと話す。

「ケガしたチームの親御さんや指導者が来て、『ウチくらいの練習で壊れるわけがないと思っていた』と言います。でも、それは間違い。僕らのように昭和の時代はアホみたいに投げて"生き残り合戦"みたいな時代でしたが、今の子どもは違う。ヒジはほんの簡単なことでも痛めます。個々が持っている"壊れない力"は全然違うので、そういう認識を保護者やチーム関係者みんなに持ってもらいたいですね」

 昭和に生まれた多くの少年は野球で遊び、その精鋭が甲子園やプロにたどり着いた。だが、令和の今は違う。サッカーやバスケットボールを選択する子が増えるなか、野球を選んだ子を一人ひとり大切に育てていかなければならない。そのために必要なのは正しい知識だ。

野球ヒジのチェックポイント

 白球を追う少年少女の"天敵"とも言える野球ヒジだが、島村医師によると学童期のチェックポイントは3点に絞られる。ヒジの内側、後方、外側だ。

「外側はチェックが難しいと思いますが、年に1回の野球検診で見つければ十分に間に合います。後方障害は肘頭疲労骨折や肘頭骨棘で、学童では起こりにくい。中学後半以降です。いずれもヒジを強制的に伸展することで痛みが誘発される。この場合は投球時の痛みを訴えるので、疑いさえすれば比較的わかります」

 学童期に気をつけるべきはヒジの内側の障害で、「8割の野球ヒジはカバーされる」と島村医師は話す。

「投げている時に『痛い』と言われると、すでに悪くなっているので遅い。できればコーチは毎回の練習、保護者は週の特定の曜日にチェックしてください。方法としてはヒジの内側を押さえて、痛いかどうか確認してもらうだけでもいいです。

『ちょっと違和感があるな』と思いながら投げられている子どもが、投げ終わった時に『痛い』とします。それは初期症状。その時点で前述したチェックをして『痛い』と言えば、プロにスクリーニングをかけてもらう。それで異常がなければOKですし、異常があるなら『早期発見できてよかった。少しの間、ヒジをケアすれば復帰できるよ』となると思います」

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