2022.04.13

投げすぎと投げなさすぎのボーダーラインは? ステージごとで変わる「野球ヒジ予防」の認識

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

【短期連載】令和の投手育成論 第5回

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「1週間に500球以内」という高校野球の球数制限に、どれくらい効果はあるのだろうか----。2020年春に導入された当初からこの規定は実効性を議論されてきたが、今春のセンバツはある意味で"答え"が出た大会となった。

「回避すべきだったと今、思っている。彼の将来を見たときに間違いだった」

 近江高校の多賀章仁監督は決勝の直後、先発を志願したエース・山田陽翔の起用について後悔の念を吐露した。山田は3月25日の2回戦から30日の準決勝までに384球を投じ、翌日の決勝では45球目を投げたあと、自ら降板のサインを送った。

今年のセンバツ大会で594球を投げた近江のエース・山田陽翔今年のセンバツ大会で594球を投げた近江のエース・山田陽翔 この記事に関連する写真を見る

野球人生の優先順位

 人の価値観は多様で、山田の起用法にはさまざまな意見がある。

 今と将来のどちらに高校生は重きを置くべきか。人生のどのタイミングで無理をする必要があるのか。優勝をかけた決勝で登板回避させるのは過保護すぎやしないか。選手が志願しての連投なら監督は決戦の場に送り出すべきか......。

 議論の方向性が微妙に異なるため、万人を納得させる答えは出ないだろう。ただし、確実に言えることがひとつある。日本高校野球連盟が設定した球数制限では、選手の"将来"を守れないということだ。

 裏を返せば、高校球児は野球人生の優先順位を明確にしなければならない。

 甲子園にすべてをかけるのか。あるいは、その先にあるプロ野球の世界まで見据えるのか。負傷を抱えての続投や、準決勝・決勝と2日間続けての先発は「今」を輝かせるかもしれないが、「将来」を犠牲にするリスクもある。監督によって起用法や育成論は大きく異なり、そうした要素も踏まえて進路先を選ぶことが不可欠だ。

 専門書からSNS、ユーチューブまで情報があふれる今、信頼できそうなものを取捨選択する力が求められている。正しい知識は血肉となって成長の土台になるが、自分に合わない情報はマイナスに働く場合もある。

 野球界では監督やコーチの"つながり"で進路を決められる場合もある一方、オンラインサロンなどで指導者を選べる時代になった。自チームにいる指導者より、外部のトレーナーやアナリストのほうが有益なアドバイスをくれるかもしれない。