「僕のなかでベイスターズが最後の球団」。10年ぶり復帰・藤田一也の古巣愛と新たな覚悟 (5ページ目)

　周りは「若手のいい見本に」と言うが、楽天時代から率先して若手に口を出すようなことはない。それが藤田のスタンスだ。誰かに与えられるままでは成長はない----そのことを自身で学んできたからである。

「僕がベイスターズの若手で、まだ補欠だった時に、石井琢朗さんとかレギュラーの人たちが試合に出続ける姿を見て、『本当に体が強いな』って思っていて。でも、実際に自分が楽天でレギュラーとして試合に出るようになって、どこかに痛みを抱えてでもプレーし続けることも学んだりとか、経験しないとわからないことって多いんです。

　僕自身、もともとああだこうだ人に言うのが好きじゃないのもありますけど、若い選手に言ったところで、本当の意味では身にならないし。言われるより、自分で気づいて行動するほうが成長の近道だと思います。そのなかで切磋琢磨していったほうが、絶対にチームは強くなる。みんなが優勝のために同じ方向を向いて戦えるように、そのためにひとつでもチームの力になれたらいいなって」

　入団会見で「あと何年できるかわからない」と言っていたように、戦力外を経験した藤田には「先」の想像はできている。

「DeNAが最後の球団になりますか？」

　その問いに、藤田はすぐに反応した。

「自分のなかでは『最後の球団』と思っています。プロの一歩目を踏み出したチームで最後を迎えられるっていうのは、本当に幸せ。プレーヤーとしてやり残したことというか、プロに入った時の目標『ベイスターズで優勝したい』って。それを達成したいですね」

　大海原のごとき青で埋め尽くされたスタンド。ファンの希望の星がグラウンドで光を放つ。繰り返される勝どき＜横浜優勝＞。歓喜が実現した時、彼らはきっとこう言うだろう。「藤田が帰ってきてくれて、本当によかった」と。