「僕のなかでベイスターズが最後の球団」。10年ぶり復帰・藤田一也の古巣愛と新たな覚悟 (4ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • photo by Sankei Visual

 本音を言えば、戦力外を受けてから毎日練習はしてきたが、身が入らなかった。それは常に不安がつきまとっていたからであり、体を動かすことでそれを紛らわしてもいた。そんな心のモヤモヤを、藤田が明かす。

「いろんな人が練習を手伝ってくれてありがたかったんですけど、『これでどこも決まらんかったら悪いな』とか考えますよね。『どうなるんかな?』って不安だったんで、練習してても胸の奥がギュッと締めつけられるような毎日だったというか。たくさんの人に応援してもらっていてありがたかったんですけど......あの2カ月は孤独でしたね」

【ひとつでもチームの力になれたら】

 そんな藤田を解放してくれたのが、古巣のDeNAだった。合同トライアウトが終わり、自由契約選手との交渉が解禁されると、すぐに球団からオファーを受けた。事前報道では「コーチ兼任」のような記事もあったが、いの一番に電話をかけてくれた編成部長の進藤達哉から明示された契約内容に少し驚きながらも、身震いする自分がいた。

「ぜひベイスターズに戻ってきてほしい。三原(一晃)代表も『1年間、長い時間一軍でチームのために戦ってほしい』と言っているし、また一緒にやろう」

 自分が最もこだわっていたプレーヤーとしての現役続行。その願望を叶えてくれたのが、「できれば戻りたい」とひそかに思い続けていたDeNAだったのである。

 12月10日の入団会見前にも、三原代表から「選手として頑張ってほしい」と球団の意向を改めて告げられ、身が引き締まった。

「自分のなかでは、選手でいる限りはレギュラーというかね、試合に出るためにやるつもりでいるんで。もちろん自分のためでもあるんですけど、『チームのためになんとか貢献できるように』と思わせてもらえました」

 昨シーズンに1年目ながら3割1分4厘、22本塁打、71打点を記録した牧秀悟を筆頭に、高卒3年目の森敬斗など、チームには有望な若手がひしめいている。ゴールデングラブ賞3度を誇る名手であっても、40歳になる藤田が易々とレギュラーの座に就けるほど、今のDeNAは甘くない。

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