「天才が努力すれば結果はついてくる」。ヤクルト・川端慎吾は首位打者から「代打の神様」になった

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Sankei Visual

 今から6年前の2015年、川端慎吾(ヤクルト)は心技体すべてが充実していた。早出練習では緩いボールを打ち返すショートゲームとティー打撃をこなし、それが終わると外野でポール間ダッシュを繰り返した。そこから少しの休憩をとり、試合前練習、そして試合へと臨んでいた。

 猛暑の夏場でもそのルーティンは続き、走り終えると息をはずませながら日陰を探していた姿をよく覚えている。

 当時、杉村繁打撃コーチは「今年、うちで一番バットを振ったのは川端じゃないかな」と話していた。

「天才が努力すれば結果はついてきますよ。天性のハンドワークと、ボールをバットの芯にあてる能力の高さ。広角に打てて、打席で粘ることができる。だから、あっさり打ちとられることが少ない」

オリックスとの日本シリーズ第6戦で日本一を決めるタイムリーを放った川端慎吾オリックスとの日本シリーズ第6戦で日本一を決めるタイムリーを放った川端慎吾この記事に関連する写真を見る 川端はチームメイトの山田哲人と首位打者争いの最中に「ヒットを打ちにいこうとか思っていないです」と、打席での意識について語った。

「とにかくつなごう、四球でもいいからランナーをためようと。その意識を変えてまで『ヒットを打ってやろう』とは思わないですね」

【首位打者から一転、川端慎吾を待ち受けていた試練】

 この年、最終的に川端は首位打者とシーズン最多安打のタイトルを獲得。1試合3安打以上は21試合を数え、犠打数はわずか2という「攻撃的2番打者」として14年ぶりのリーグ優勝の立役者となった。ちなみにこのシーズン、3番の山田が本塁打王と盗塁王、4番の畠山和洋は打点王に輝いた。

 しかし、そこから試練が待ち受けていた。

 2016年は打率.302を残すが、自打球を当てて骨折するなど出場は103試合にとどまった。2017年は春季キャンプ中に椎間板ヘルニアを発症。8月に手術に踏みきるも、体の状態は思わしくないまま月日が過ぎていく。結局、2017年は一軍出場なし。

 2018年は97試合の出場で打率.259、2019年は37試合で打率.164の結果に終わってしまった。

 昨年1月には2度目の腰の手術を決断。春季キャンプに参加することなく、リハビリに励んだ。

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