「時代に逆行」なんかじゃない。中日・柳裕也は140キロ強の直球で、なぜ奪三振を量産できるのか

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

中日・柳裕也インタビュー@後編

 かつて夢の数字だった「球速160キロ」を計測する投手が、日本でも決して珍しくない時代になった。そんな今、セ・リーグで誰よりも三振を奪っている(7月8日時点でセ・リーグ1位の103奪三振をマーク)中日・柳裕也のストレートは、ほとんどが140キロを少々上回る程度にすぎない。

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現在セ・リーグの奪三振トップを走る柳裕也現在セ・リーグの奪三振トップを走る柳裕也この記事に関連する写真を見る トレーニング理論のアップデートが進む近年、日米で投手の球速アップが著しいこともあり、遅い球で奪三振を重ねる柳を「時代に逆行」と表したメディアもある。

 対して、メジャーリーグの番組制作に携わるスタッフは今季の投球を見て、感銘を受けたという。「日本にもこういうピッチングをする投手が出てきたか」と。個人的にも、柳は最先端を走っているように感じる。

「そんなにオシャレなものではないですよ」

 柳は笑いながら謙遜すると、投手としての本心を明かした。

「スピードは出たほうがいいです。僕だって150キロ、出したいなって思いますし」

 でも......。そう言って少し間を置くと、中日の勝ち頭は誇り高く言葉を継いだ。

「これはカッコつけかもしれないですけど、そういう人たちにはないもので、僕にはあるものがあると思うし」

 球速は、投手を評価するひとつの指標にすぎない。スピードでは平均未満の柳だが、多彩な変化球と制球力という武器がある。

 奪三振を量産している今季、投球内容で明らかに変わった点のひとつが、球種別割合におけるストレートの減少だ。昨季は43.9%だったのが、今季は37.54%に下がった(昨季は『2021プロ野球オール写真選手名鑑』、今季は『データで楽しむプロ野球』参照)。

「試合のなかで1球1球、状況に応じてベストな球を選んでいった時に、たまたまそうなっているだけです。別にストレートを減らしたとか、どの球種を増やしたとか、そういう感覚はあまりないですね」

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