「時代に逆行」なんかじゃない。中日・柳裕也は140キロ強の直球で、なぜ奪三振を量産できるのか (4ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

 独自のスタイルで日本の最先端を行く男に、聞いてみたい質問があった。ダルビッシュ有(サンディエゴ・パドレス)は「変化球はアート」とピッチングの醍醐味を形容するが、柳はどんな点に魅力を感じているのだろうか。

「難しいですね」

 しばらく間を置くと、答えを出した。

「僕が投げていて一番醍醐味を感じる瞬間は、見逃し三振をとった時なんです。なんとなく、わかりますかね?」

 思い出されたのが6月18日のヤクルト戦、4回二死から中村悠平に右中間への二塁打を打たれた直後、ドミンゴ・サンタナを迎えた場面だった。

 初球は外角低めにボールとなるスライダーを振らせ、次は同じコースに続けたストレートが外れる。3球目は外角低めの際どいコースでスライダーを再び振らせ、4球目はクイックのような早い投球モーションで同じコースにスライダーを投げ込み、外側に外れた。

 2ボール、2ストライクからの5球目。捕手の木下がアウトローに構えるなか、139キロのストレートは真ん中に甘く入ったが、タイミングを完全に外されたサンタナは反応できず、即座にベンチへ引き上げた。

 投手にとって見逃し三振は、頭と技術が結実した結果と言える。

「僕は1球1球、いろんなことをやりながら投げています。そのなかで見逃し三振を取れると、駆け引きや自分の技術に『よっしゃ!』って思いますね」

 ならば、奪三振王は欲しいタイトルのひとつだろうか。

「まあ、そういう数字も耳に入ってきます(笑)。1試合ずつしっかり投げて、数字は最後に振り返られればいいですね。でも、シーズン最初に比べて最近は減ってきているので、またしっかり投げられればと思います」

 そう話した4日前、6月25日の広島戦では3試合ぶりの白星を飾った。

「その前の2試合はフィジカル的な部分がそのまま技術に影響しました。それを修正して、広島戦ではなんとか粘りながら投げられました」

 しかし、7月2日のヤクルト戦は4回5失点で降板。持ち味の制球力が狂い、上位を争う相手に痛い黒星を喫した。

4 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る