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「時代に逆行」なんかじゃない。中日・柳裕也は140キロ強の直球で、なぜ奪三振を量産できるのか (2ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

 胸のうちを推測すると、ストレートを減らしたというより、勝負できる球種が増えたのだろう。今季はプレートを踏む位置を一塁側から三塁側に戻し、縦スライダーを効果的に使えるようになった。さらにシンカーの精度が高まり、とりわけ左打者へのカウント球、勝負球としても生きている。

 ピッチングは複合的なもので、シンカーの進化はプラスアルファの効果をもたらせた。"対になる球種"のカットボールが、有効性を増したのだ。

「カットとシンカーで、今よく言われる『ピッチトンネルを作る』という感覚です。スライダーに関しては、ピッチトンネルは無視して、曲がり幅で勝負しようと思っています」

 投手と打者は18.44メートルの距離で対峙し、140キロのストレートは約0.45秒でキャッチャーミットに到達する。打者がコースや球種を判断し、打ちにいくかを決めるまでの時間は0.2秒未満。距離に直すと、ホームベースから7.2メートルの地点にボールが届くまでに判断を求められる。この位置にあるとされるのが、"仮想空間"のピッチトンネルだ。

 カットボールとシンカーはリリースされたあと、ともにストレートと同じ軌道を描いていく。右投手から見てそれぞれ左、右方向に変化を始めるのは、ホームベースから7.2メートルを切って以降だ。投手はこうした軌道と変化し始めるタイミングを利用し、ピッチトンネルを作って打者を"錯覚"させていく。

 さらに高等技術として、あえてピッチトンネルを外すという選択もある。柳にとってそうした球種がスライダーとカーブだ。打者はピッチトンネルに意識をとられると、そこから外れた球種に手を出しにくくなる。

 柳のスライダーとカーブは似たような球筋を描く一方、平均球速は122.5キロ、114.4キロと異なり、打者にとってタイミングを合わせにくい。同方向に変化する平均133.7キロのカットボールもあり、瞬時に見分けるのは困難だ(各球種の球速は昨年の平均値)。

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