原辰徳監督と阿部慎之助から信頼を得たきっかけ。橋上秀樹が明かす巨人選手たちの舞台裏 (5ページ目)

  • 岡田浩人●取材・文・写真 text & photo by Okada Hiroto

 組織内での立場でいえば、『嫌われ者』ですよね。その嫌われ者の部分を担えるかどうかがヘッドコーチには問われる。2015年に大久保博元監督のもとでヘッドコーチを1年やりましたが、のちに大久保監督から『橋上さんには僕に代わって嫌われ役をやってもらえて、僕が言いづらいことも言ってもらって、助かりました』と言ってもらえました。選手に言いづらいことを言うのもヘッドコーチの仕事ですから」

 今年、橋上氏は10年ぶりに独立リーグ・BCリーグの新潟で監督を務めている。NPB入りを目指す選手たちと汗を流す中で、10年前との選手の"違い"も感じている。

「今の選手は10年前に比べると、情報を手にしやすい環境にあります。例えば、YouTubeでダルビッシュ投手がこう言っているとか......そうしたレベルの高いものに触れやすくなっている反面、頭でっかちになっている選手が非常に多いと感じます。表面的に『わかっています』ということが多く、でもその奥深いところに話を持っていくと理解できていない、間違ったとらえ方をしている選手がいます。

 映像は表面ですから、その奥に基本的な部分があるわけで、そこをもう一回掘り下げて理解する必要がある。ただ間違いなく10年前よりも持っている力、素材として能力が高い選手が多いので、なんとかもう一皮、二皮むければ上(NPB)に手が届くのではという選手がいるのも事実です。そういう意味では非常に楽しみです」

 6月19、20日には地元・新潟市のハードオフ・エコスタジアムで古巣である巨人の三軍と交流戦を戦った。第1戦は2対7で敗れたものの、橋上氏が期待を寄せる新潟の中軸2選手が本塁打を放った。第2戦は6人の投手リレーで4対3と競り合いを制した。5月から6月中旬にかけて負けが続いたチーム状態は、ここにきて徐々に上向いている。「だいぶ野球らしくなってきました」と試合後に笑った橋上氏。10年前も夏場以降にチームの成長が加速し、球団初の地区優勝を成し遂げた。新潟のファンはその再現を期待している。「巨人との2連戦で得た自信を胸に、選手はさらに成長してほしい」。名将のもと、参謀として重ねてきた経験と引き出しを、橋上氏はいま若い選手たちに惜しみなく注いでいる。


Profile
橋上秀樹(はしがみ・ひでき)
1965年11月4日生まれ、千葉県出身。安田学園高を卒業後、1983年にドラフト3位でヤクルトに入団。日本ハム、阪神を経て、2000年に現役引退。2005年に新設された楽天イーグルスの二軍外野守備・走塁コーチに就任し、シーズン途中に一軍外野守備・走塁コーチに昇格。以降、独立リーグの新潟アルビレックスBCの監督、巨人の一軍戦略コーチ、第3回WBC(2013年)の戦略コーチ、楽天一軍ヘッドコーチ、西武の一軍野手総合コーチなどを歴任。現在は再び新潟アルビレックスBCの監督を務める。

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