谷繁元信「ずる賢さが足りない」と指摘。セ・リーグ捕手を細かくチェック (4ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

 見逃せないのが、「2番・捕手」に入ることも多い中村悠平だ。全57試合のうち44試合で先発マスクをかぶり、打率.286(リーグ11位)と打棒を発揮。盗塁阻止率.273はリーグ3位で、チーム防御率3.96はリーグ5位だ。

 昨季は故障もあって29試合の出場に終わったが、今年は見違えるような活躍を披露している。実は昨年、谷繁氏は中村から「自分には何が足りないですか」とアドバイスを求められたという。その答えは、「表現力」だった。

「キャッチャーとして自分をもっと表現できるようにすれば、もっと周りが見られるようになるのではという話をしました。見え方が変わってくると、相手バッターに対する攻め方も絶対変わってくるはずなんです」

 捕手に求められる「表現力」とは、たとえば「腕を振れ」と右手で大きく示すジェスチャーや、ミットで地面を叩いて「変化球を低めに投げろ」と伝えるものだ。こうした指示を嫌う投手も少なくないが、それでも必要なことだと、谷繁氏は強調する。

「ピッチャーにすれば、『俺はプロだから、そんなことわかっているよ』と思うでしょう。でもキャッチャーは、『わかっていても、できていないじゃないか』と伝えるしかない。大事なのは、そういう表現をやり続けることです」

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 高卒13年目で31歳を迎える今季、中村は昨季までと明らかに変わったと谷繁氏は見ている。

「今年は攻撃、守備ともに必死で、なんとか信頼されるキャッチャーになりたいという姿勢が表われるようになってきました。中村は2015年に優勝した後、伸び悩みましたが、それはキャッチャーとしての引き出しが少なかったということです。今は相手を抑える方法や、自分のチームのピッチャーをどうリードすればいいか、以前より引き出しがだいぶ増えたと思います」

 フィールドの野手でひとりだけ反対方向を向き、"扇の要"や"女房役"と形容される捕手は、文字どおりチームの中心だ。各チームでキャッチャーがどんな役割を果たし、どれだけ勝利に貢献できているかを見ていくと、ペナントレースの味わいは一層深まっていく。

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