「壊れちゃうんじゃないか」。日本ハム・栗山英樹監督が何度も見た清宮幸太郎の涙 (5ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Ichikawa Mitsuharu(Hikaru Studio)

2016年以来の優勝を目指す日本ハム・栗山監督2016年以来の優勝を目指す日本ハム・栗山監督── 今シーズンの開幕3連戦の相手はイーグルスです。となれば、田中将大投手は第2戦に先発してくるようです。

「みんなが快刀乱麻を期待しているなかで、ウチがマー君(田中将大)に一泡吹かせたら、そりゃ、おもしろいよね。僕は彼が帰ってきてくれて本当によかったと思ってるんです。ウチの選手には『まさかマー君のことを好きに打っていいなんて思ってないよな』と言いますよ。『そんな野球でマー君に勝てますか』『この球だけ狙っていこうとか、ツーストライクまでは見ていこうとか、なりふり構わず徹底していかなきゃ、とても通用しませんよ』って。そういう野球をやらなきゃ勝てない相手がいてくれるというのは、成長する材料になるんです。だからマー君様々なんですよ。

 すげえピッチャーの力を借りて、我々がどう成長させてもらえるか。何しろ僕が監督になってからの2年間、田中将大には一回も勝ててないんだから。みんなで心をひとつにしてマー君をやっつけるぞって、フォアボールを必死で取りに行く。......そういう野球って、いいじゃないですか。知恵を振り絞って、野球の原点に立ち返る。そうさせてくれるのがマー君なんです」

── 秘策はありますか。

「今年、どうやったら選手たちに野球の魂が伝わるかなと思って、野球マンガをオフに読み返してみたんです。『ドカベン』(作者・水島新司)とか『MAJOR』(作者・満田拓也)とか......そうすると、あらためて山田太郎とか茂野吾郎の魂が感じられた。野球に対する魂、仲間に対する魂、そういうものがなければ最後の最後に本当の力は出ないんだなって。『論語と算盤』(著者・渋沢栄一)もいいけど、野球マンガの話をしたほうが今の選手には伝わるのかもしれないなと思いました。

 だから打倒マー君の秘策は、マンガよりも現実が先へ行くような、ムチャクチャをしてやろうかなと思ってます。采配も含めて、型にはまらないほうがいい。もっとも、僕の世代は『黒い秘密兵器』(原作・福本和也、漫画・一峰大二)なんですけどね。知ってます? 椿林太郎。黒い秘球、ゼロの秘球、魔の秘球、かすみの秘球。大リーグボールよりも前に秘球があったんですよ。読んでみて下さいよ、『黒い秘密兵器』。魔球? 違う違う、魔球じゃなくて、秘球です(笑)」

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