「ボールをよく見て」は間違い? 秋山翔吾、浅村栄斗が唱える新常識 (2ページ目)
プロ野球では平均球速が約145キロまで到達し、投手がリリースしてから約0.4秒で捕手のミットに収まる。ボールをよく見ていると、タイミング的にバットで弾き返すことはできない。だから、プロの打者は投球の軌道を思い描き、ボールと当たるポイントにバットを出していく。
それを浅村の表現にすると「感覚で打つ」となり、「ボールをよく見たら打てない」となるのだ。
それでは、小中学生に打撃についてアドバイスする場合、どんなことを言えばいいのだろうか。
「ひとつは、自分のタイミングで打つこと。相手どうこうより、まずは自分の形をつくらないと打てないと思います。だから、僕なら『ボールを見る』ということは教えないですね。ピッチャーがリリースした瞬間、自分の動作として打てる体勢に入っていけていれば、ボールも自然に呼び込んで打てます」
ボールをよく見ていると、投球に対して受け身になりやすい。大事なのは、打者自身が主導権を握って打ちにいくことだ。「ボールをよく見る」以前に、「自分の形をつくる」ことの重要性を説く浅村の姿勢は、彼の対応力の高さを表しているように感じる。
もうひとり、日本で稀代のヒットメイカーになった秋山にも「ボールをよく見て打て」の真偽について聞いてみた。
「実際には(ボールを最後まで)目で追えてないですからね。ピッチャーの持ち球の軌道をイメージすることが一番、重要なんじゃないかな」
プロの打席では、ボールをよく見て打つことは事実上「不可能」だ。そのうえで「ボールをよく見る」という感覚を、秋山はこう定義した。
「僕は軌道をいろいろイメージして打ちにいくけど、打った瞬間を見ているわけではない。打ったあとに(ボールに視線を向けたまま)顔が残るかどうかが、"見ている"ということだと思います。ボールがこういう軌道で来るから、自分がバットをこう振れば前に飛ぶだろうと(前方に)顔を振っているということは、実際には"見ていない"わけです。
ただし(投球の軌道について)イメージはしている。一瞬、ボールを捕まえたあと、追いかけるような感覚が僕の中であるんです」
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