「ボールをよく見て」は間違い? 秋山翔吾、浅村栄斗が唱える新常識 (3ページ目)
感覚の言語化に優れる秋山だが、同時に、プロの感性は常人には理解しがたいものがある。ボールをバットで捕まえたあと、追いかけるような感覚とはどういうものだろうか。
「調子が悪い時は、喜ぶのが0.1秒早い、という感覚があるんです。(調子がいい時とは)0.1秒、ボールを見ている時間が違う。ファウルや凡打になっている時は、喜ぶタイミングがひとつ早いんです」
投手がリリースしてから0.4秒でボールがやってくる世界では、0.1秒は大きな差になる。秋山は、調子が悪い時には打つタイミングが0.1秒早く、ボールを"追いかけられていない"という感覚になる。逆に調子がいい時は、0.1秒の感覚を調整でき、バットでコンタクトしたあとにボールを"追いかける"ように感じる。それだけ精緻に自身の感覚を働かせ、なおかつ動作を一致させられるから、ヒットを量産できるのだろう。
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では、そうした領域に到達するには、何が重要になるのか。小中学生向けのアドバイスを求めると、秋山はこう答えた。
「いろんなパターンのボールを打っていくことで、いろんな軌道のイメージをつくることが重要だと思います。たとえば、トスバッティングをするにしても、ただ単調に投げてもらうのではなく、トスのタイミングを変えてもらったり、高めや低めに投げてもらったりして、自分の引き出しを増やす。歩きながら打ってみたり、早いタイミングで投げてもらったりして、『こうやって打てば、こういう当たりになる』という引き出しを増やすことが重要だと思います」
秋山は具体的な練習法を挙げたうえで、打撃のポイントについて口にした。
「自分が打つだけではなく、人の打席を見て『自分だったらどう打つかな』と考える。そういうイメージを数多く持つことが、"ボールを捕らえる"ということにつながってくる。大事なのは"ボールを見る"ことではなく、自分だったらこう打っていくという"イメージをつくる"ことだと思います」
打席で結果を残すために重要なのは、ボールをバットの芯で捕らえることだ。そのためにはさまざまなパターンの球に対し、自分の形をつくっていくことが必要になる。興味深いことに、浅村と同じく秋山も「ボールを見る」より大切なことがあると指摘した。そこにこそ、打席で結果を残すためのポイントが詰まっている。
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