イチローの出現がセ・パの格差を生んだ...。
レジェンド3人が語る証言 (2ページ目)
「3連戦の頭にミーティングがあります。そこで"要注意"のバッターたちを先乗りスコアラーから言われるんですけど、毎回、イチローは"要注意"バッターなんです(笑)。それで毎回『ここに投げないといけない』って言われるんだけど、なかなか投げ切れない。イチローの調子がいい時は、神経使って際どいところにボール球を投げても、反応なしに見送られますからね」
もっとも、プロの投手として経験を積み、実績をつくるにつれて、対イチローで苦心するばかりではなかったろう。黒木氏自身、初の2ケタ勝利挙げた97年(12勝)、対戦成績は9打数2安打、打率.222。13勝で最多勝に輝いた98年は22打数8安打、打率.364だったが、14勝を挙げた99年は11打数2安打、打率.182と抑え込んでいる。
「何度も対戦するうち、おおよそ、ここに投げれば反応してくれるだろう。ここは絶対、投げちゃダメだ、ということがわかってきました。と同時に、イチローのタイミングを外したり、ずらしたり。そういう細工をしていったんです。あと、これは彼だけじゃないですけど、自分で工夫して、バッターになかなかボールを見せないフォームに変えていったり」
力で抑え込むのではなく、制球力と、細工と、工夫で抑えていく。その点、百戦錬磨のベテラン投手はどう対していたのか。黄金期の西武でリリーフを務め、イチローが出現した94年はプロ16年目だった鹿取義隆氏に攻略法を聞く。
「出てきた頃のイチローは何十本もホームランを打つようなバッターじゃなかったので、ヒットならしょうがない、長打だけは気をつけろ。それが基本。で、長打を避けるためには、外の低めのボールでゴロならいい、という考えで投げる。長打の可能性が少ないところにボールを集めて、結果、ゴロで内野を抜かれてヒットになるなら納得がいく、と思ってたね」
打ち取る、というよりは、得点につながるバッティングをさせない。ゴロを打たせることが得意だった鹿取氏ならではの考え方だろう。
「それで結果、イチローが出塁しても、ゲッツーの可能性があるからそれを狙ったり、二塁でフォースアウトを狙ったり。そうしてアウトを取っていかないと、とてもじゃないけど抑えられなかったね」
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