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プロ初登板、あと少しでノーヒット・ノーラン。あの衝撃から4年、広島ドラ1の今 (3ページ目)

  • 前原淳●文 text by Maehara Jun
  • photo by Sankei Visual

 課題克服のカギは、課題を課題と考えすぎない"無意識"にある。キャッチボールからすべての変化球をストレートと同じ割合で投げる。矢崎は言う。

「何か変化が起きている時は、自分にいいことができている時だと思う。世間から見たらネガティブに映るかもしれないけど、変化は自分にとってはいい未来」

 変化を受け入れられるようになったことが、最大の成長かもしれない。

 昨年11月、チーム最年長選手として参加したフェニックスリーグで、飯田スコアラーは矢崎のたしかな変化を感じた。シーズン途中から再転向した先発で、新たにカットボールとツーシームを試投しながら結果を得ただけではない。矢崎が後輩選手にかけたひと言にあった。

 後輩が投内連係で1軍経験の投手が試合ではまずしないジャンピングスローをした練習後、矢崎は「24時間のうち、あのたった10分ぐらいは集中したほうがいいよ」と諭した。その姿に、飯田スコアラーは成長を確信したという。

「ちょっと前まではそっち側にいたんですけどね。考え方が変わって、視野も広がったんだなって思いました」

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 若かりし頃の自分と今の自分、変わったかと思うかと矢崎に聞いてみた。嫌がる様子もなく、照れたそぶりも見せず、素直に首をタテに振った。

「変わったんじゃないですか。以前からもっとよくなりたいと思っていたんですけど、結局、そこでもがいている感じが多かった。自分を変化させることがうまくなることだと思っていたのですが、ひとつのことを極めていくのもうまくなる術なのかなと」

 今年、矢崎が大事にしている言葉がある。

<流れる、波、一体化、リラックス、考えるな、感じろ、長く、大きく、呼吸、連動、楽しむ、喜び>

 2019年から始めたインスタグラムでも、自分に言い聞かせるように感じたこと、気づいたことをアップしている。これまでのように理論漬けになるのではなく、感覚や直感を大事にすることを覚えた。

 あの日以来、まだ手にしていないプロ2勝目のためだけではない。新しい矢崎拓也として戦えることを証明するために踏み出す一歩は、大きな一歩となりそうだ。

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