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プロ初登板、あと少しでノーヒット・ノーラン。あの衝撃から4年、広島ドラ1の今 (2ページ目)

  • 前原淳●文 text by Maehara Jun
  • photo by Sankei Visual

 真っすぐに絶対的な自信を持っていた投手が、それを武器にできない壁にぶち当たった。デビュー戦で証明した真っすぐの強さは、変化球という引き立て役があってこそ際立つのであって、真っすぐ一辺倒では武器が武器でなくなってしまう。

 変化球でカウントを整えられず、真っすぐ頼みの配球となる。カウントが2ボールになれば、3ボールにしたくない心理が働く。

「100%で(真っすぐを)待たれるので、120%のストレートを投げようとしていつもと違う投げ方になってしまう」

 力めば、真っすぐの球威も精度も落ちる。悪循環を好転させるには、変化球の精度を向上させるしかない。

 結果的に、矢崎にとって1軍どころか、2軍でも投げられない環境に置かれたことは、自分自身と向き合う転機となった。寄り添ってくれた飯田スコアラーは2019年までともにプレーした先輩であり、同志でもある。飯田スコアラーの言葉は、徐々に矢崎の体と心に染み渡っていった。

「他愛もない話をするように、僕が感じたことを伝えただけです。あいつは注意されることで、自分自身を苦しめているように感じた。それなら注意されないようにやろうよと。考え方が変われば、見られ方も変わるんじゃないかって。単純に、持ち球のスライダーとフォークの精度を上げることで、2ボールからでも打者の頭は真っすぐ33.3%、スライダー33.3%、フォーク33.3%になる。それだけでも大きく違う」

 矢崎は「2.5軍」でフォームを矯正したわけでもなければ、変化球の握りを変えたわけでもない。ただ単純に考え方を変えたことで、投球内容も変わっていった。

 8月に2軍に合流し、同月7日のウエスタンリーグでの阪神戦が矢崎にとっての開幕戦だった。2戦目の中日戦では6者連続三振を奪うなど好投を見せ、18日に1軍に招集された。

 だが1軍ではこれまでと変わらない投球内容で、6試合を投げて防御率9.39。再び2軍降格となった。"制球難"というレッテルはそう簡単に剥がせるものではない。1軍では中継ぎということもあって、真っすぐに偏った配球になってしまった。

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