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念願のプロ野球デビュー。白仁天は夢かと思い、審判の足を蹴ってみた (2ページ目)

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki

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「李さん、李周一(イ・チュイル)さんいう、軍事政権の最高会議の副議長。この人が、会長と監督と僕ら選手を何人か呼んだんですね。アジア大会で非常に活躍した、いうことで。そのとき、李さんが『何か希望はあるか? 私ができることはなんでもやってやるから』と言うたわけです。日本の新聞を見て、知ってたんでしょう。

 これはチャンスだな、と思って、『僕は日本のプロ野球に行きたいんです。絶対どんなことあっても、日本の選手と同じような選手になりたい。覚悟はできてますから、行かしてください』と。そしたら、会長と監督、慌ててましたわ。はっはっは」

 白さんによれば、大韓野球協会の会長は「これからの韓国の野球のためにも、こういう選手が外国に出るのはあかん」と言った。すると、李副議長が会長に向かって言った。「あんた、考えが間違っとる。どんどん出さんとあかん。まず行って、勉強してきて、後輩たちに教えてもいい。たとえダメでも、いろんなこと勉強してこられるじゃないか」と。

「それで李さんに『できるんかい?』って聞かれたから、『できます。契約もしてきました』と答えたら、『あ、そう』言うて、決まったんですよ」

 この面談のあと、李副議長は、白さんの日本プロ野球入りを国民がどう思っているか、世論を調べたという。結果、大多数が支持している、とわかったそうだが、いわば、国中を巻き込んだ末の東映入団だったのだ。

「李さんに会ったのが1月半ばで、2月の22日に日本に来て。だからものすごく慌ただしくて、羽田にパッと降りたら、カメラのフラッシュがまぶしくて大変ですわ。あれ、100人ぐらいいたのかな。急に怖くなったですね。俺、すごいことしちゃったな。先が見えないのに、あんまりにも自分が先走りしたんじゃないかと。ホント、怖くなって。それからもう今度ね、毎日、悩みですわ」

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