ノムさん逝去から1年。息子・克則が
明かす長嶋茂雄との最後の会話 (2ページ目)
現役引退した翌年(2007年)、オヤジのもとでバッテリーコーチとなって、最初に言われた言葉が「コーチは根気が一番」でした。「根気強く指導することで、コーチは選手に対して情熱と愛情が生まれてくる。そこから選手にいろんなことを気づかせ、いい方向へ導いてあげることが大事なんだよ」と。
その根気こそ、オヤジの教えにあった「キャッチャーとは」の探究にも大きく関係してくるわけです。
キャッチャーというポジションは、ピッチャーのボールを受け、最適な配球で相手バッターを抑えることが大きな役割ですが、それと同じぐらい大事なのが視野を広く持つことなんです。
ピッチャーの様子、内・外野のポジショニング、相手バッターやランナーの動き......いろんな情報に枝葉をつけて細分化しながら、観察力や洞察力、分析力を養っていかなければいけません。そこからベストな答えを導き出し、決断する。それがキャッチャーの本分なのだと、オヤジから叩き込まれました。
「キャッチャーは扇の要であり、守りの中心でなければならない。監督の分身なんだから、使命感と責任感を持って、試合に臨まなければいけない。そのためにはいろんなことに興味を持つ。日々、感性を磨いていかないと務まらない」と。
この教えは、キャッチャーとしては当然ですが、コーチになっても共通するものだと気づきました。
練習から選手の動きに目を凝らし、試合では流れを読んだうえで最適な作戦、適材適所の選手起用を監督とともに考えていかなければなりませんでした。一昨年までは、極端に言えばバッテリーだけを見ておけばよかった。それがチーム全体を注視しなければならなくなったわけです。指導者として勉強させていただいた1年でしたし、あらためてオヤジのすごさを思い知らされました。
本当なら、シーズン後に「どうすればよかった?」と聞いてみたかった。小言やボヤキを散々言われたでしょうね(笑)。
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