田中将大と契約しなかったヤンキース。「第2エース」確立をどう考えたか (2ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by AP/AFLO

 もっとも、それだけではなかったのだろう。ヤンキースがその気になれば予算が作り出せないわけではなく、実際に、のちにコリー・クルーバー、ジェイムソン・タイロンの獲得に合計1325万ドル(約13億9000万円)を費やしている。

 そこでポイントになるのは、29日の会見でブライアン・キャッシュマンGMが残したこんな言葉だ。

「2021シーズンを戦うにあたり、これが最善の道だと思った。ひとり(=田中)分の価格で2人(=クルーバー、タイロン)を獲得できれば、それがよりよい戦略なのかもしれない」

 昨季のヤンキースはプレーオフに進んだが、地区シリーズでレイズに惜敗。その敗因のひとつになったのが、コールに次ぐ"第2エース"の不在だった。

 本来、それになるはずだった田中は、昨年のサマーキャンプ初日に打球を頭に当てる不運なアクシデントで出遅れた。それでも復帰後、シーズン中10度の先発機会で9戦、自責点3以下という好成績を残したことはさすがであり、プレーオフ開始前には先発2番手の立場を確固たるものとしていった。

 ただ、調整遅れもあって、昨季の田中は"第2エース"と呼ばれるほどの支配力は最後まで取り戻せなかった印象がある。

 ヤンキース首脳陣もそう考えていたのだろう。のちに論議を呼んだレイズとの地区シリーズでの起用法は象徴的だった。

 シリーズ第2戦でヤンキースは、田中ではなく新人のガルシアをオープナーとして先発させ、2回から左腕JA・ハップにつなぐという奇策を用いた。結果は見事に失敗し、第2、3戦の敗北が響いてヤンキースはレイズに2勝3敗で敗退。振り返ってみれば、このシリーズまでに田中が好調時の切れ味を取り戻していれば、第2戦ではすんなりと先発を任されていたに違いない。

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