温厚で最強だった大杉勝男。八重樫幸雄は路上での緊迫の場面に「ヤバい」 (3ページ目)

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Sankei Visual

――その人にとっても、交番の前だったのはラッキーでしたね。目の前にお巡りさんがいれば安心ですから。

八重樫 暗かったから、その運転手もまさかプロ野球選手の大杉さんだとは思っていなかっだろうね(笑)。お巡りさんが、「この人にちゃんと謝りなさい」と促したら、きちんと謝った。それで大杉さんも一瞬で優しくなって、「ああいう運転はするなよ」と言って、自分の車のトランクを開けたんです。

――何のために?

八重樫 ちょうど、この日は3本ホームランを打っていて、「ホームラン賞」として野球盤をもらっていたんです。それを運転手に渡して、「子どもいるんだろ? コレ、お土産に持っていきなよ」とプレゼントしたんだよ。警察官は大杉さんに気づいていたけど、その彼は気づいていなかったんじゃないかな。

――昔、神宮球場では選手がホームランを打つと、「ホームラン賞として、エポック社の野球盤が贈られます」と場内アナウンスが流れていましたけど、本当にその場でもらえるんですね!

八重樫 そうそう。賞品の野球盤と化粧品はストックしてあったみたいで、ホームランを打ってクラブハウスに戻ると、自分のロッカーのところに置いてあるんです。大杉さんは年末のゴルフコンペの賞品として野球盤を持って帰るところだったんだけど、思わぬところで役に立ったね(笑)。その後、第三京浜に乗ってからは安全運転でしたよ。

【有事の際には真っ先に味方を守る人】

――その後、大杉さんが怒っているところを見たことはありますか?

八重樫 全然、記憶にないんです。グラウンド上では、何度か怒っている姿を見ましたけどね。怒るとしたら、ビーンボールを投げられたときとか、味方が死球を当てられたときかな? あの張本(勲)さんが「大杉は強い」と言っていたのも知っていたし、乱闘になったときに張本さんを守るため、真っ先に乱闘の中心に駆けつけたのも大杉さんだって聞いたことがあるよ。

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