温厚で最強だった大杉勝男。八重樫幸雄は路上での緊迫の場面に「ヤバい」 (2ページ目)

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Sankei Visual

――車の中ではどういう話をするんですか?

八重樫 やっぱり、その日の試合のことが多かったですよ。大杉さんは自分が打ったときはいろいろと話しかけてくれるんですけど、打てなかったときは無口でしたね。あとは、普段タバコは吸わないんだけど、香りのいい葉巻を黙って吸っていました。「あれ、大杉さんはタバコ吸うんですか?」と聞いたら、「うん、匂いが好きなんだ」と。ただ吹かすだけだったね。

【見知らぬ人に、ホームラン賞を気前よくプレゼント】

――以前、乱暴な運転をするドライバーに対して大杉さんがキレたというお話を、ちらっと伺ったと思います。あらためて話していただけますか?

八重樫 大杉さんがホームラン3本打って、大活躍した日の夜でした。大杉さんもいい気分で青山通りを横浜方面に走っていたら、環七と交差する四つ角で、右折車線にいた車が急に左に入ってきたんです。そのとき、大杉さんがカーッとなって。それで、その車を追いかけて停めさせたんですよ。

――温厚だったという大杉さんにしては珍しい行動ですね。

八重樫 珍しいですね。僕も初めて見ましたから。それで、大杉さんも車を停めて降りたから、「ヤバいな」と思ったので僕も慌てて降りたんです。

――車を停めさせられた上に、後ろの車から大杉さん、八重樫さんという大男2人が出てきたら、完全に相手はビビりますね(笑)。

八重樫 大杉さんが窓をトントンと叩いても、相手は頑なに窓を開けようとしない。でも、運がよかったことに、ちょうど車を停めた場所に交番があったんです。僕らのやり取りを見ていたお巡りさんが交番から出てきて「どうしたんですか?」と聞いてきたので、事情を説明したら、お巡りさんも「窓を開けろ」と。それでようやくドアが開いた。その運転手はブルブル震えていましたよ(笑)。

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