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「ケガの功名」で進化した魔球。
牛島和彦は執念でフォークを習得した (2ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • photo by Sankei Visual

 どうすればしっかり落ちてくれるのか。牛島は試行錯誤を重ねたが、なかなか解決策を見つけ出せずにいた。

「人差し指と中指のつけ根を切れば、ちゃんとボールを挟めるんじゃないかと思ったこともありました。それはさすがに『ちょっと痛そうやなぁ』ということでやりませんでしたが、指の第一関節あたりで挟んで、第二関節以降を曲げてボールを握るようなところからスタートしました。

 プロに入った当初もその握りでフォークを投げていましたが、しっかりコースを狙って投げようとするとすっぽ抜けてしまう。だから思いきり腕を振れないんです。自信がないというか、プロで通用する球ではなかったですね」

 それでもあきらめなかった牛島は、ストレッチ感覚で毎日指を広げていれば関節が柔らかくなってうまくボールを挟めるのではないかと思い、愚直に実践した。そんな牛島の指に変化が訪れたのがプロ2年目の秋だった。

「気がついたら右手の人差し指と中指だけパンパンに膨れ上がり、痛くてまともに曲げることもできなくなってしまって......。自分ではストレッチ感覚でやっていたのですが、明らかにじん帯を無理に伸ばしていたんでしょうね(笑)。そんな状態だったので、腫れが治るまで安静にしていたんです。すると、"ケガの功名"というか、"荒療治"というべきか、腫れが引くと人差し指と中指の第2関節がグニャッと外側へ広がるようになったんです。そのおかげでボールをしっかり挟めるようになり、自分の狙ったコースに投げることができるようになりました」

 フォークをマスターした牛島は、3年目に17セーブを挙げると、5年目には29セーブで最多セーブ投手に。成功の秘訣を、このように語っている。

「フォークをマスターできたのは、投げ方も大きなポイントでした。それまではボールがスポッと抜けてしまうので、腕を押し出すようなイメージで投げていました。でも、しっかりと挟めるようになってからは、ストレートと同じフォームで腕を思いきり振ることができたので、打者を翻弄することができました」

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