「人的補償の呼び方はどうなのか」。鶴岡一成が語る経験者の気持ち (2ページ目)
鶴岡にとって、この時が3度目の移籍。1度目は2008年に横浜ベイスターズ(当時)から巨人へのトレード。2度目はFA権を行使して巨人からDeNAへの"出戻り"(2012年)。そして3度目がDeNAから阪神へのFA人的補償と、それぞれ立場が異なる。
現在はDeNAの二軍バッテリーコーチを務める鶴岡(画像:リモート取材の切り取り) 鶴岡は予期せぬ移籍を経験していたからこそ、レギュラー捕手の有事に備えた2番手捕手、「若手バッテリーの手本に」という阪神に求められる理由をすぐに理解し、次へのモチベーションに落とし込むことができた。移籍に伴う環境の変化もそこまで気にならなかったという。
「キャリアを重ねてきてからの移籍だったのですんなり入れたというか、みんなが受け入れてくれたこともあり、周囲の人が思うほど環境の変化で苦労したことはなかったです。ただ、阪神時代のほうが友達感覚で話しかけてくるファンは多かったですね(笑)」
一方で鶴岡は、「人的補償」という表現について疑問を持っていると話す。金銭補償との対比で表現としてはわかりやすいが、選手からすると気持ちがいいものではないことは理解できる。
「制度としては、相手の球団から補強ポイントに当てはまる選手を獲得できるわけですから、戦力も多少は均等化できていいのかもしれません。ただ、『呼び方はどうなんかな』って今でも思います。どんな名称がいいのかはわからないですけど、アメリカではFA移籍やトレードはもっと盛んに行なわれているのに、日本は少ない。人的補償というネーミングは、選手たちの気持ちを考えても、ちょっと考えてもいいのかなと思います」
とはいえ、どのような形での移籍であれ、最大限チームに貢献することがプロであり、鶴岡はそれを体現してきた。だからこそ常に必要としてくれる球団があり、現役引退後も野球に携わることができているのだろう。
2 / 3