なぜ巨人は「3割打者ゼロ」で優勝できたのか。
元コーチが原野球の真髄を語る (2ページ目)
今季の巨人は、リーグ3位のチーム打率.255ながら、500得点はリーグトップ。リーグ1位のチーム打率.266、3割打者3人(佐野恵太、梶谷隆幸、宮﨑敏郎)を揃える、強力打線のDeNAよりも得点が高い。
出塁率をしっかりと稼げているところにも注目すべきです。坂本は.376、丸も.377と高いですし、4番の岡本にしても.359と、最低限の数字を残しています。
そして得点圏打率からも、彼らの貢献度はより理解できます。3番の坂本はリーグトップの.373、4番の岡本も.361と高い。打線のつながりでも説明したように、上位打線で効率よく点数が取れます。出塁率の高い5番の丸から再びチャンスをつくり、下位の大城などでさらに得点を増やせるのが、今年のジャイアンツの大きな特徴です。
なにより、彼らの貢献は打つだけではありません。僕が着目しているのは、クリーンアップのバントです。
決して数が多いわけではありませんが、坂本の送りバントは7月15日の広島戦で1つありました。翌日の広島戦では丸が試合終盤の7回と9回に、自身初の1試合2つの送りバントを決めています(シーズンでは3犠打を記録)。この3つのバントはすべて得点に絡んでおり、彼らの自己犠牲精神はもちろん、原(辰徳)監督の信念が現れた采配にも感じるわけです。
原監督は「絶対に点がほしい」と思った場面では、何が何でも点を取りにいくし、そのために最善の策を取ります。なにより、坂本や丸のように、経験と実績がある絶対的な主力選手に対しても、やるべきことをやらせる求心力がある。
有望な若手の出現に中心選手の安定した役割と、裏付けされた巨人の攻撃力の高さがあった。それを具現化させているのは、球団最多の監督勝利数を更新した原監督の手腕にあるのでしょう。
今シーズンを振り返ってみると、やはり「監督力」が一番の強みだったと思います。僕が一軍でコーチとしていた時期から一貫していると感じるのは、原監督の厳しさです。
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