なぜ巨人は「3割打者ゼロ」で優勝できたのか。元コーチが原野球の真髄を語る
2年連続でセ・リーグを制した巨人は、「3割打者ゼロ」でシーズンを終了することが濃厚だ。これは過去10年では、2011年の中日、2014年の巨人だけで、パ・リーグに関しては1球団もない。突出した成績を残した選手がいないながら、なぜ2位阪神と8.5ゲーム差など、他球団を圧倒できたのか? 「第二次」原政権下の2008年から2010年まで一軍バッテリーコーチを務めたプロ野球解説者の西山秀二氏に聞いた。
2年連続リーグ優勝を果たし胴上げされる巨人・原辰徳監督 まず4年目の吉川(尚輝)が、ジャイアンツが固定できなかったセカンドで規定打席に到達できたのが大きい。打率.271は及第点を挙げられますし、11盗塁が示すように足もある。
そこに、育成出身で吉川と同じ4年目の松原(聖弥)も11盗塁と、持ち味である足を生かしてスタメンを勝ち取ったことで、攻撃のバリエーションが増えました。
シーズン中盤あたりから彼らが1、2番に固定され、3番・坂本(勇人)、4番・岡本(和真)、5番・丸(佳浩)のクリーンアップに、よりいい形でつなげるようになりました。吉川が出塁、盗塁で二塁まで進み、松原の進塁打でランナー三塁とチャンスをつくる。そしてクリーンアップで返す。「ヒット1本で1点」が取れるような打線になっています。
さらに、3年目の大城卓三がキャッチャーとして独り立ちできたことも大きかった。守備に関しては、小林(誠司)と炭谷(銀仁朗)が一枚も二枚も上手。そのため、ふたりよりバッティングがいい大城は、昨年はファーストで出る機会が多かった。今年はスタメンマスクを被る試合が増えたことによって、相手チームのピッチャーはジャイアンツ打線に気が抜けなくなりました。
バッティング面で弱いとされている小林や炭谷が8番に座ることによって、次の9番バッターはピッチャーになりますから、相手からすればひと息つけるわけです。それが、大城がキャッチャーとして試合に出ることで、「ここで嫌なバッターがきたな」と相手にイメージづけられる。いくら「3割打者ゼロ」といっても、攻撃面では昨年と同等、それ以上の力を誇っていると思っています。
1 / 3