高木豊の言葉に八重樫幸雄がブチ切れ。「野球、知ってるんすか?」 (2ページ目)

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi

――すると、ゲッツーどころかひとつもアウトを取れずに、しかも得点を許してしまうことになりますね。

八重樫 そうなんだよね。絶対に点を与えたくなかったから、「何としてでも三塁走者をアウトにしよう」と思ったわけですよ、僕は。で、その三塁走者が豊だった。彼は足が速いから、なおさら必死になる。確実にホームベースを踏める体勢じゃなかったし、アンパイアに確実に「アウト!」と言ってもらうために、豊にタッチしようとしたんです。

【大洋・古葉竹識監督の謝罪でガマンはしたけれど......】

――状況的に「ランナーにタッチは必要ない。フォースプレーでいい」と理解した上で、タッチにいったわけですね。

八重樫 そう。それで豊の足にタッチして、審判は無事にアウトを宣告した。ゲッツーは取れなかったけど、得点は与えなかった。まぁ、最低限のプレーができたと思ったんです。そうしたら豊が立ち上がって、僕に向かって言ったんだよね......。

――高木さんは何と言ったんですか?

八重樫 吐き捨てるように「野球、知ってるんすか?」って。思わずオレも「あぁっ?」ってなったよ。一体、誰に向かって口を利いているんだと。アイツは「フォースプレーでいいのに、どうしてわざわざタッチするんですか?」って言いたかったんだろうけど、こっちはさっき言った状況でタッチにいったわけだから。

――それで、八重樫さんはどうしたんですか?

八重樫 豊はすぐに三塁ベンチに引き上げていくから、彼の背中を追って大洋ベンチまで追いかけました。

――八重樫さんがそこまで怒るのは珍しいですね。それから?

八重樫 そうしたら、ベンチにいた古葉監督が最初に異変に気づいて出てきたんだよ。「ハチ、どうした?」と聞かれたんで、事情を説明したんです。すると古葉さんはすまなそう顔をして、「悪いなハチ。アイツ、ちょっと変わってるからガマンしてやってくれ」って謝られたんだよね。古葉さんにそこまで言われたから、腹は立つけどガマンしたけどさ。

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