「私が入っていいのか...」。DeNAが
NPB初の女性ATを採用。その意義と意味 (3ページ目)
またDeNAには田中健二朗や東克樹などトミー・ジョン手術を受けた選手をはじめ、リハビリに励む選手が少なくない。林ATはリハビリ中の選手に接することが多いといい、そこにひとつのやりがいを感じている。
「回復のためのトレーニングメニューをつくらせてもらうことがあるのですが、肉体ばかりではなく、心理面の方もしっかりと見ていきたいと思っているんです。健常の選手と、ケガをした選手というのは、考えることが違いますからね。ただ、選手がどんどん回復して、持てるウエイトが大きくなったり、体つきが変わってくるのがわかると嬉しいという思いはありますし、ゲーム復帰に何とかつなげてくれればなっていつも思うんです」
彼女は先に心理面という話をしたが、ATの役目は肉体やコンディショニングを見ることばかりではない。選手の考えていることに敏感に気づき、その複雑な心理面においてもアンテナを張り変化を見逃さないことが求められる。林ATは感慨深い表情で語る。
「さりげない会話やその表情を気にかけるようにしています。選手が、先輩ATやコーチと話している時も小さな変化を逃さないように」
どうしても選手は試合に出たいがために、無理をすることもある。それは仕方のないことだ。しかし、そこでATが状況を冷静に伝え、選手自身が己のコンディションについて深く考えられるようにすることも重要になってくる。
その観点から考えると、林ATの女性ならではの目線というのは、これまでとは違う角度で物事を見つめることができるはずだ。
採用の際にも球団からは「男性社会に入ると、考え方がそちらに寄ってしまうが、違うと思っても不安にならず、自分らしさを失わず職務を果たしてほしい」と伝えられている。
「チームの方針が"多様性"ということもあるので、違う目線を忘れることなくやっていけたらと思っています。選手の方々はやはりひとつのことに執着してしまうこともあるので、なにを求めているのかしっかりと会話をしつつ、違う視点も提示してすることができればと。選択肢を増やし、可能性を広げていけたらいいですね」
3 / 4