澤村拓一が見せる投球術の「悪い顔」。
元巨人コーチが語る移籍後の変化
9月7日、香月一也との電撃トレードで巨人からロッテに移籍した澤村拓一。ここ数年、思うようなピッチングができずに苦しんでいた澤村だったが、ロッテ移籍後はこれまでの鬱憤を晴らすかのように、圧倒的なパフォーマンスを発揮しチームに貢献している。はたして、澤村に何が起きているのか。かつて巨人の投手コーチとして澤村を指導した経験がある川口和久氏に、その要因について語ってもらった。
ロッテ移籍後、圧巻のピッチングを披露している澤村拓一 澤村が巨人に入団した2011年、ちょうど私は巨人の投手コーチをしていましたが、彼についてとくに印象に残っているのが横滑りのスライダーです。スピードもありますし、とにかくキレがすばらしかった。そのスライダーと150キロを超すストレートを武器に11勝(11敗)をマークして新人王を獲得しました。
ただ、その数字が示すとおり"いい顔"もある一方で、"悪い顔"をのぞかせるのが澤村というピッチャーの特徴でした。とはいえ、投手としての才能は一級品。これからピッチング、配球を覚えていけばすごい投手になるんじゃないかという予感はありました。
ところが、彼はなぜか野球選手としてではなく、ボディビルダーのようなマッチョを目指して、筋肉をつけたんです。その結果、肩の可動域が狭くなり、スライダーの曲がりが悪くなってしまったんです。
そんな弊害が起きたのは2年目。そこから澤村のピッチングはワンパターンになってしまいました。
要するに、力に頼るだけ、ストレートに頼るだけのピッチングになってしまった。変化球とのコンビネーションで打ち取るのではなく、とにかく力でねじ伏せてやろうと。首を振ったらほぼストレートでした。
そのなかで、とくにヤクルトに多かったのですが、空振りしない打者に対して粘り負けしてしまう。空振りが取れる球種、配球がなく、制球力もあるわけではないので、結局粘られて四球を出す。いわゆる自滅することが多くなっていったと思います。
そういう状況が続きましたが、今年はスプリットがすごくいい。その成果がいま、ロッテに移籍して出ていると思います。
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