「アライバプレー」誕生秘話。2人がアイコンタクトで演じていた離れ業 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 寺崎江月●協力 cooperation by Terasaki Egetsu

◆鷲見玲奈×斉藤和巳のプロ野球対談>>

 その言葉を受けて、荒木はヒザを叩いて「そう、それがすごいんです!」と熱弁した。

「井端さんは、僕がトスしないときも近くまで走り込んで、準備してくれていましたからね」

グローブをはめて守備について語る「アライバ」photo by Ishikawa Kohzoグローブをはめて守備について語る「アライバ」photo by Ishikawa Kohzo 井端は「ヒットは捕らない」という信条を持っていた。誤解を招きかねない言葉だが、若手時代に当時のエース・今中慎二からかけられた言葉がきっかけだった。

「三遊間のゴロを横っ飛びで止めたんですけど、送球が間に合わずにアウトにできなかったんです。今中さんに謝ると、『お前、ケガするぞ。あんな打球止めたって、セーフなんだからな』と言われました。その言葉を聞いて、プロ野球というものを少し理解できたような気がしたんです」

 それ以来、ヒット性の打球は無理して追わないようになっていた井端だが、二遊間のゴロを捕る荒木の近くにはいつも走り込んでいた。それは、アウトにできる可能性を感じていたからだ。

 そんな労力をかけながらも、井端は「あのプレーの選択権は荒木にある」と語る。

「捕った時点で荒木に力が残っているかどうかは、俺にはわからないことだから」

 その言葉を受けて、荒木は首を横に振ってこう返すのだった。

「僕からすると、選択権は僕にあるように見えて、実は井端さんの手のひらの上でうま〜く転がされていた感覚でしたよ」

 二遊間のコンビとして2004年から2009年まで6年連続でゴールデングラブ賞を受賞したアライバコンビだが、攻撃面でも1番・荒木、2番・井端のコンビを組んでいた。

 当時はアイコンタクトでヒットエンドランを決めるという離れ業を演じていた。アライバの攻撃面に関するやりとりをそのままお届けしてみよう。

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