心技体が崩れていった多和田真三郎。類まれなる才能を持つ18番の復活に期待 (4ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

 多和田の代名詞と言えるのが、独特な投球フォームだ。まるでサブマリン投手のように左足から地面深くに身体を沈み込め、上手投げとしては極めて低いリリースポイントからボールを放つ。意識的に身につけたものではなく、幼少の頃、気づけばこの投げ方をしていたという。

 日本全国から毎年優秀な選手が選りすぐられるプロ野球は、強烈な個性がぶつかり合う世界だ。熾烈な競争社会を勝ち抜くには、何らかの点で飛び抜けた能力を備えることが不可欠になる。

 多和田の類を見ない投球フォームは、投球の軌道を予測しにくいという点で武器になった。140キロ台という平凡なスピードの速球であっても、独特の球筋で向かってくるから、打者はバットの芯で捉えにくい。とりわけ右打者の内角には、えげつないツーシームや高速シンカーのようにシュート回転して向かってくる。

 そうした多和田の投球は、心身の絶妙なバランスで成り立っていたのだろう。自身が振り返ったように、スライダーやフォークをうまく操れないのは、投球メカニクスが崩れている証左だった。

 チームが5月21日、22日に行なった故郷・沖縄への遠征に帯同せず、黙々と修正に励んだ。翌日に日本ハム戦の先発を控える5月24日には、こう話している。

「キャッチボールから、スライダーの感覚を意識して取り組んできました。自分のスタイルとしてスライダーでしっかりストライクを取れると、とても楽になってくるので。今はスライダーが指に引っかかって、しっかり握ろうと思えば抜ける。逆に抜けているからしっかり腕を振ろうと思えば、指に引っかかる。悪い状態が続いています」

 迎えた日本ハム戦では、地の底に落ちた。味方打線が2回までに5点を先行、多和田自身は3回まで完璧な投球内容だったものの、4回二死、突如崩れた。中田翔への死球をきっかけに、4本のヒットと四球で一挙5失点。イニングの途中で屈辱の降板となった。

「最近、勝負どころで打たれています。 (4回の)渡邉(諒)のフォアボールもそうですけど、そういうところで抑えられていないのがよくないと思いました。勝ちもついてないので、どうしても勝ちたかった......」

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